专利摘要:
蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)等のシャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下又は排除し、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログを発現させる下等真核宿主細胞について記載する。特定態様において、宿主細胞は更に1個以上のO−蛋白質マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子の欠損もしくは破壊、及び/又は内在性もしくは外来Ca2+ATPアーゼの過剰発現を含む。これらの宿主細胞は組換え糖蛋白質の大量生産と、O−グリコシル化の低下した組換え糖蛋白質の生産に有用である。
公开号:JP2011514157A
申请号:JP2010547683
申请日:2009-02-09
公开日:2011-05-06
发明作者:クツク,ダブリユ・ジエイムズ;チエ,ビヨン−クオン;ボブローウイツ,ピヨートル
申请人:グライコフィ, インコーポレイテッド;
IPC主号:C12N1-19
专利说明:

[0001] (発明の背景)
(1)発明の分野
本発明は組換え発現システムにおける蛋白質生産を改善するためのシャペロン遺伝子の使用に関する。一般に、組換え下等真核宿主細胞は異種シャペロン蛋白質をコードする核酸と、内在性シャペロン蛋白質をコードする遺伝子の欠損又は破壊を含む。これらの宿主細胞は組換え糖蛋白質の大量生産と、O−グリコシル化の低下した組換え糖蛋白質の生産に有用である。]
背景技術

[0002] (2)関連技術の記述
分子シャペロンは蛋白質の折り畳みと分泌、特に抗体の折り畳みと分泌に重要な役割を果たす。下等真核生物、特に酵母において、蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は抗体重鎖及び軽鎖間のジスルフィド結合等の多量体蛋白質間のジスルフィド結合の形成を助けるように機能するシャペロン蛋白質である。ヒトPDIシャペロン蛋白質を過剰発現及び/又は内在性PDIを過剰発現させることによりP.pastorisにおける抗体発現レベルを増加しようとする試みが過去に行われている。例えば、Wittrupら,米国特許第5,772,245号;Toyoshimaら,米国特許第5,700,678号及び5,874,247号;Ngら,米国出願公開第2002/0068325号;Tomanら,J.Biol.Chem.275:23303−23309(2000);Keizer−Gunninkら,Martix Biol.19:29−36(2000);Vadら,J.Biotechnol.116:251−260(2005);Inanaら,Biotechnol.Bioengineer.93:771−778(2005);Zhangら,Biotechnol.Prog.22:1090−1095(2006);Damascenoら,Appl.Microbiol.Biotechnol.74:381−389(2006);並びにHuoら,Protein express.Purif.54:234−239(2007)参照。]
[0003] 蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は非触媒反応に比較してジスルフィド含有蛋白質の回収率を実質的に増加又は実質的に低下させることができ、ジスルフィド含有蛋白質の発現には小胞体(ER)における高濃度のPDIが不可欠である(Puig and Gilbert,J.Biol.Chem.,269:7764−7771(1994))。PDI1とそのコシャペロンの作用を図2に示す。] 図2
[0004] Guntherら,J.Biol.Chem.,268:7728−7732(1993)では、Saccharomyces cerevisiaeのTrg1/Pdi1遺伝子を蛋白質ジスルフィドイソメラーゼファミリーのマウス遺伝子で置換している。2種類の非グリコシル化哺乳動物蛋白質PDI及びERp72はTrg1の重要な機能の少なくとも一部を代行できることが判明したが、これらの3種類の蛋白質はチオレドキシン関連ドメインの周囲の配列が著しく相違し、ERp61は不活性であった。]
[0005] 米国特許第5,772,245号明細書
米国特許第5,700,678号明細書
米国特許第5,874,247号明細書
米国出願公開第2002/0068325号明細書]
先行技術

[0006] Tomanら,J.Biol.Chem.275:23303−23309(2000)
Keizer−Gunninkら,Martix Biol.19:29−36(2000)
Vadら,J.Biotechnol.116:251−260(2005)
Inanaら,Biotechnol.Bioengineer.93:771−778(2005)
Zhangら,Biotechnol.Prog.22:1090−1095(2006)
Damascenoら,Appl.Microbiol.Biotechnol.74:381−389(2006)
Huoら,Protein express.Purif.54:234−239(2007)
Puig and Gilbert,J.Biol.Chem.,269:7764−7771(1994)
Guntherら,J.Biol.Chem.,268:7728−7732(1993)]
発明が解決しようとする課題

[0007] 有効なシャペロン蛋白質を使用する改良型ベクター及び宿主細胞株に基づき、酵母及び糸状菌(例えばPichia pastoris)の他の蛋白質発現システムが開発されるならば、蛋白質の組換え生産用、特に抗体の組換え生産用の遺伝子強化酵母株の開発に有益であろう。]
[0008] 本発明は補助遺伝子及びシャペロン蛋白質を使用して組換え蛋白質を生産するための改良方法及び材料を提供する。一実施形態では、シャペロン経路をヒト化する遺伝子操作の結果、Pichia pastoris細胞で産生される組換え抗体の収率が改善された。]
[0009] 本明細書に記載するように、本発明の方法及び材料には、従来公知の発現方法に勝るこのような発現方法の非自明な利点を提供する多数の属性がある。]
課題を解決するための手段

[0010] (発明の簡単な要旨)
本発明者らは、組換え宿主細胞の内在性シャペロン蛋白質の1種以上を1種以上の異種シャペロン蛋白質で置換することにより、組換え宿主細胞における組換え蛋白質の発現を改善できることを見出した。一般に、内在性シャペロン蛋白質をコードする遺伝子を、宿主細胞で産生させる組換え蛋白質と同一又は類似種に由来し、内在性シャペロン蛋白質のホモログをコードする異種遺伝子で置換すると、組換え蛋白質の発現を増加できることが判明した。例えば、哺乳動物シャペロン蛋白質をコードする異種遺伝子を宿主細胞に導入すると、シャペロン蛋白質をコードする内在性遺伝子の機能を下等真核宿主細胞で低下又は排除することができる。一般に、哺乳動物シャペロンは宿主細胞により産生させる組換え蛋白質と同一種に由来するように選択される。哺乳動物シャペロン蛋白質を発現するが、その内在性シャペロン蛋白質を発現しない下等真核宿主細胞は活性な正しく折り畳まれた組換え蛋白質を大量に産生することが可能である。これは内在性PDI遺伝子を保持する下等真核宿主細胞における組換え蛋白質の産生に対する生産性の改善である。]
[0011] 本発明者らは更に、本明細書に記載するように蛋白質発現を改善することにより、その内在性蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)遺伝子の1個以上を欠損又は破壊した健康な生存可能な組換え宿主細胞を構築できるという別の利点が得られることを見出した。下等真核細胞でPMT遺伝子の1個以上を欠損又は破壊する結果、細胞で産生される組換え蛋白質のO−グリコシル化の量が低下する。しかし、マンノシルトランスフェラーゼをコードする1個以上の遺伝子の欠損を更に含み、内在性シャペロン蛋白質を発現する下等真核宿主細胞にPMT欠損を形成すると、得られる細胞は生存不能又は産生能の低い細胞となることが多く、商業用には不適切であることが判明した。]
[0012] 従って、所定態様において、本発明はシャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下又は排除し、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を提供する。他の態様において、下等真核宿主細胞は酵母又は糸状菌宿主細胞である。]
[0013] 更に他の態様では、内在性PDI1が宿主細胞に存在しなくなるようにシャペロン蛋白質である蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)をコードする内在性遺伝子の機能を破壊又は欠損させ、哺乳動物PDI蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入し、宿主細胞で発現させる。一実施形態において、哺乳動物PDI蛋白質は宿主細胞で発現させる組換え蛋白質及び宿主細胞のゲノムに組込む哺乳動物PDIをコードする核酸分子と同一種である。例えば、宿主細胞に導入したヒト遺伝子から組換え蛋白質を発現させる場合には、PDIをコードする遺伝子もヒト由来であることが好ましい。他の実施形態において、PDIを発現させるための核酸分子は宿主細胞で機能的であり、哺乳動物PDI蛋白質をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結されたプロモーター及び転写終結配列等の調節エレメントを含む。他の実施形態では、哺乳動物PDI遺伝子をコードする核酸分子で内在性PDI遺伝子を置換する。これは相同組換え又はオーバーラップする配列を両端に含む哺乳動物PDI遺伝子により内在性PDI1遺伝子のループを広げる一塩基置換イベントにより実施することができる。]
[0014] 他の態様では、下等真核宿主細胞に由来する調節ヌクレオチド配列と上記宿主細胞により産生させる選択された哺乳動物蛋白質をコードするコーディング配列を含む組換えベクターで本発明の下等真核宿主細胞を更に形質転換する。所定態様において、選択された哺乳動物蛋白質は治療用蛋白質であり、抗体等の糖蛋白質とすることができる。]
[0015] 本発明は更に上記のような内在性シャペロン蛋白質の1種以上をコードする遺伝子の置換に加え、蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させた酵母及び糸状菌宿主細胞等の下等真核宿主細胞を提供する。特定実施形態では、PMT1及びPMT4遺伝子から構成される群から選択される少なくとも1個の内在性PMT遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させる。]
[0016] 他の実施形態において、宿主細胞は内在性Pichia pastorisPDI1を哺乳動物PDIで置換したPichia pastoris細胞等の酵母又は糸状菌宿主細胞とすることができ、宿主細胞は更にPichia pastoris細胞に由来するか又は前記細胞で機能的であり、抗体等のヒト治療用糖蛋白質をコードするオープンリーディングフレームと機能的に連結された調節ヌクレオチド配列を含み、宿主細胞に導入されたベクターを発現する。その後、PMT1及びPMT4から構成される群から選択される蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性Pichia pastoris遺伝子の機能を低下又は排除するように宿主細胞を更に操作し、機能的PMT遺伝子をもつ宿主細胞に比較してO−グリコシル化の低下した組換え蛋白質を産生することが可能な宿主細胞を提供する。他の態様では、宿主細胞を更にPMT遺伝子発現又はPMT蛋白質機能の1種以上の阻害剤と接触させる。]
[0017] 他の態様において、本発明はヒト蛋白質を含む哺乳動物由来の糖蛋白質である組換え糖蛋白質を生産するための改善された特徴をもつ非ヒト真核宿主細胞、下等真核宿主細胞、並びに酵母及び糸状菌宿主細胞等の組換え宿主細胞を含む。本発明の組換え宿主細胞はシャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能の低下又は排除により改変されている。内在性遺伝子の機能の低下又は排除は当分野で公知の任意方法により実施することができ、例えば内在性遺伝子の機能を低下又は排除するために十分な遺伝子配列の突然変異、挿入又は欠失により、内在性遺伝子の遺伝子座の改変により実施することができる。機能を低下又は排除することができるシャペロン蛋白質としては限定されないが、PDIが挙げられる。一実施形態では、その機能を低下又は排除するようにPDIをコードする内在性遺伝子を欠失又は改変させる。]
[0018] 他の態様では、シャペロン蛋白質の機能を低下又は排除した後に、例えば破壊又は欠損させたシャペロン蛋白質のホモログをコードする少なくとも1個の非内在性遺伝子で宿主細胞を形質転換することにより置換する。他の態様では、破壊又は欠損させたシャペロン蛋白質のヒト又は哺乳動物ホモログをコードする少なくとも1個の外来遺伝子を発現させるように宿主細胞を形質転換する。他の態様において、外来遺伝子は宿主細胞を使用して産生させる組換え糖蛋白質の起源種と同一種又は近縁種に由来するホモログをコードする。]
[0019] 特定態様では、内在性シャペロン蛋白質PDI1の機能を低下又は排除し、宿主細胞を使用して産生させる組換え糖蛋白質の起源種と同一種又は近縁種に由来するPDIのホモログを発現させるように宿主細胞を形質転換する。例えば、哺乳動物蛋白質発現用Pichia pastoris発現システムでは、内在性PDI1遺伝子の機能を低下又は排除するようにPichia pastoris宿主細胞を改変し、哺乳動物PDI遺伝子をコードする核酸分子で宿主細胞を形質転換する。]
[0020] 本発明は更に非ヒト真核宿主細胞、下等真核宿主細胞、又は酵母もしくは糸状菌宿主細胞における組換えヒト又は哺乳動物糖蛋白質の生産性を増加させるための方法を提供する。本発明の方法はシャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下又は排除する段階を含む。一般に、前記方法は更に機能を低下又は排除したシャペロン蛋白質のホモログをコードする少なくとも1個の異種遺伝子で宿主細胞を形質転換する段階を含む。異種遺伝子は機能を低下又は排除したシャペロン蛋白質のヒト又は哺乳動物ホモログをコードする外来遺伝子を含む。他の態様において、外来遺伝子は宿主細胞を使用して産生させる組換え糖蛋白質の起源種と同一種又は近縁種に由来するホモログをコードする。多くの態様において、機能を低下又は排除することができるシャペロン蛋白質としてはPDIが挙げられる。]
[0021] 従って、更に本明細書に開示する宿主細胞で組換え蛋白質を生産する方法も提供し、例えば、一実施形態において、前記方法は、シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を破壊又は低下させ、内在性シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む。別の実施形態において、前記方法は、(i)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(ii)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む。別の実施形態において、前記方法は、シャペロン蛋白質PDIをコードする内在性遺伝子と、蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ−1(PMT1)又はPMT4蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質PDIの少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む。]
[0022] 更に、本発明の上記宿主細胞でCa2+ATPアーゼを過剰発現させると、O−グリカン含有量が低下することも判明した。上記宿主細胞でカルレティキュリンとERp57蛋白質を過剰発現させてもO−グリカン含有量が低下することも判明した。従って、上記宿主細胞の他の実施形態において、宿主細胞は更に異種プロモーターと機能的に連結された1種以上の外来又は内在性Ca2+ATPアーゼをコードする1個以上の核酸分子を含む。他の実施形態において、Ca2+ATPアーゼはPichia pastoris PMR1遺伝子又はArabidopsis thaliana ECA1遺伝子によりコードされるCa2+ATPアーゼである。他の実施形態において、宿主細胞は更にカルレティキュリン及び/又はERp57をコードする1個以上の核酸分子を含む。適切な他のCa2+ATPアーゼとしては限定されないが、ヒトSERCA2b蛋白質(ATP2A2ATPアーゼ,Ca++輸送心筋,遅筋2)とPichia pastorisCOD1蛋白質(Saccharomyces cerevisiaeSPF1のホモログ)が挙げられる。適切な他の蛋白質としては限定されないが、ヒトUGGT(UDP−グルコース:糖蛋白質グルコシルトランスフェラーゼ)蛋白質とヒトERp27蛋白質が挙げられる。]
[0023] 従って、本発明はシャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を破壊又は欠損させ、内在性シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を提供する。]
[0024] 別の実施形態において、破壊するシャペロン蛋白質は蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)であり、別の実施形態において、哺乳動物ホモログはヒトPDIである。]
[0025] 一般に、下等真核宿主細胞は更に組換え蛋白質をコードする核酸分子を含み、特定態様において、前記蛋白質は糖蛋白質であり、他の態様では抗体又はFcやFab等のそのフラグメントである。]
[0026] 他の実施形態では、蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させる。特定実施形態において、PMT蛋白質はPMT1及びPMT4から構成される群から選択される。従って、宿主細胞は更にPMT1もしくはPMT4の一方の低下、破壊もしくは欠損又はPMT1及びPMT4の両方の低下、破壊もしくは欠損を含むことができる。従って、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞も提供する。]
[0027] 他の実施形態において、宿主細胞は更に内在性又は異種Ca2+ATPアーゼをコードする核酸分子を含む。特定態様において、Ca2+ATPはPichia pastoris PMR1及びArabidopsis thaliana ECA1から構成される群から選択される。従って、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞も提供する。更に、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞も提供する。]
[0028] 更に他の態様において、宿主細胞は更にヒトERp57シャペロン蛋白質をコードする核酸分子又はカルレティキュリン(CRT)蛋白質をコードする核酸分子又は両者を含む。特定態様において、カルレティキュリン蛋白質はヒトCRTであり、ERp57はヒトERpS7である。従って、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログとCRT又はERp57の少なくとも1種をコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞も提供する。更に、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、CRT又はERp57の少なくとも1種と、少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞も提供する。更に、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、CRT又はERp57の少なくとも1種と、少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞も提供する。]
[0029] 上記宿主細胞の他の態様において、宿主細胞はPichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichta membranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stipitis、Pichia methanolica、Pichia種、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces種、Schizosacchromyces pombe、Schizosacchroyces種、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces種、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium種、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Physcomitrella patens及びNeurospora crassa、Pichia種、任意Saccharomyces種、任意Schizosacchroyces種、Hansenula polymorpha、任意Kluyveromyces種、Candida albicans、任意Aspergillus種、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、任意Fusarium種、及びNeurospora crassから構成される群から選択される。]
[0030] 他の実施形態としては、本明細書に開示するように改変していない宿主細胞で獲得可能な収率よりも高収率で組換え蛋白質を生産する方法と、本明細書に開示する遺伝子改変を含まない組換え糖蛋白質に比較してO−グリコシル化又はO−グリカン含有量の低下した組換え蛋白質を生産する方法が挙げられる。組換え蛋白質としては治療関連蛋白質及び糖蛋白質が挙げられ、抗体とそのフラグメントが挙げられる。]
[0031] 従って、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を破壊又は欠損させ、内在性シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0032] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0033] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0034] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログとCRT又はERp57の少なくとも1種をコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0035] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、CRT又はERp57の少なくとも1種と、少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0036] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、CRT又はERp57の少なくとも1種と、少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0037] 更に、(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を破壊又は欠損させ、内在性シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含むO−グリコシル化又はO−グリカン含有量の低下した組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0038] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含むO−グリコシル化又はO−グリカン含有量の低下した組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0039] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と;(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含むO−グリコシル化又はO−グリカン含有量の低下した組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0040] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、CRT又はERp57の少なくとも1種をコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と、(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と、(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含むO−グリコシル化又はO−グリカン含有量の低下した組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0041] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、CRT又はERp57の少なくとも1種と、少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と、(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と、(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含むO−グリコシル化又はO−グリカン含有量の低下した組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0042] 更に、(a)(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子と、(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させ、シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログと、CRT又はERp57の少なくとも1種と、少なくとも1種のCa2+ATPアーゼをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させる下等真核宿主細胞を準備する段階と、(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階と、(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含むO−グリコシル化又はO−グリカン含有量の低下した組換え蛋白質の生産方法を提供する。]
[0043] 上記方法の他の態様において、宿主細胞はPichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichta membranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stipitis、Pichia methanolica、Pichia種、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces種、Schizosacchromyces pombe、Schizosacchroyces種、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces種、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium種、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Physcomitrella patens及びNeurospora crassa、Pichia種、任意Saccharomyces種、任意Schizosacchromyces種、Hansenula polymorpha、任意Kluyveromyces種、Candida albicans、任意Aspergillus種、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、任意Fusarium種、及びNeurospora crassaから構成される群から選択される。]
[0044] 更に本明細書に開示する宿主細胞により産生される組換え蛋白質も提供する。]
[0045] 特定実施形態において、上記宿主細胞の任意1種は更に宿主細胞が特定N−グリカン構造又はN−グリカン構造の特定混合物を主体とする糖蛋白質を産生できるようにする遺伝子改変を含むことができる。例えば、宿主細胞はMan3GlcNAc2又はMan5GlcNAc2コア構造をもつN−グリカンを産生するように遺伝子操作されており、特定態様では、GlcNAc、ガラクトース又はシアル酸等の1個以上の付加糖鎖を非還元末端に含み、場合により還元末端のGlcNAcにフコースを含む。従って、N−グリカンとしては、2本側鎖及び複数側鎖のグリコフォームと分岐型グリコフォームの両者が挙げられる。N−グリカンの例としては限定されないが、Man8GlcNAc2、Man7GlcNAc2、Man6GlcNAc2、Man5GlcNAc2、GlcNAcMan5GlcNAc2、GalGlcNAcMan5GlcNAc2、NANAGalGlcNAcMan5GlcNAc2、Man3GlcNAc2、GlcNAc(1−4)Man3GlcNAc2、Gal(1−4)GlcNAc(1−4)Man3GlcNAc2、NANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)Man3GlcNAc2が挙げられる。]
[0046] 定義
本明細書で特に定義しない限り、本発明に関して使用する科学技術用語は当業者に通常理解されている通りの意味をもつ。更に、状況からそうでないことが明白な場合を除き、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。一般に、本明細書に記載する生化学、酵素学、分子細胞生物学、微生物学、遺伝学及び蛋白質・核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関して使用する命名法とその技術は当分野で通常使用されている周知のものである。特に指定しない限り、本発明の方法及び技術は本明細書の随所に引用及び記載する種々の一般及び特定文献に記載されているような当分野で周知の従来方法に従って一般に実施される。例えばSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992,及び2002年補遺);Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990);Taylor and Drickamer,Introduction to Glycobiology,Oxford Univ.Press(2003);Worthington Enzyme Manual,Worthington Biochemical Corp.,Freehold,NJ;Handbook of Biochemistry:Section A Proteins,Vol I,CRCPress(1976);Handbook of Biochemistry:Section A Proteins,Vol II,CRC Press(1976);Essentials of Glycobiology,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999)参照。]
[0047] 本明細書に引用する全刊行物、特許及び他の文献はその開示内容全体を本明細書に組込む。]
[0048] 特に指定しない限り、以下の用語は以下の意味をもつものとする。]
[0049] 本明細書で使用する「N−グリカン」及び「グリコフォーム」なる用語は同義に使用し、N−結合型オリゴ糖、例えばアスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合によりポリペプチドのアスパラギン残基と結合したものを意味する。N−結合型糖蛋白質は蛋白質中にアスパラギン残基のアミド窒素と結合したN−アセチルグルコサミン残基を含む。糖蛋白質上に存在する主要な糖はグルコース、ガラクトース、マンノース、フコース,N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びシアル酸(例えばN−アセチルノイラミン酸(NANA))である。N−結合型糖蛋白質では糖基のプロセシングはERの内腔で翻訳と同時に行われ、ゴルジ装置で続行する。]
[0050] N−グリカンはMan3GlcNAc2の共通5糖コアをもつ(「Man」はマンノースを意味し、「Glc」はグルコースを意味し、「NAc」はN−アセチルを意味し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを意味する)。N−グリカンはMan3GlcNAc2(「Man3」)コア構造(別称「トリマンノースコア」、「5糖コア」又は「パウチマンノースコア」)に付加された末端糖鎖(例えばGlcNAc、ガラクトース、フコース及びシアル酸)を含む分岐(側鎖)の数が相違する。N−グリカンはその分岐成分に従って分類される(例えば高マンノース型、複合型又はハイブリッド型)。「高マンノース」型N−グリカンは5個以上のマンノース残基をもつ。「複合」型N−グリカンは一般に1,3マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcと、「トリマンノース」コアの1,6マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcをもつ。複合型N−グリカンは更に場合によりシアル酸又は誘導体(例えば「NANA」ないし「NeuAc」、ここで「Neu」はノイラミン酸を意味し、「Ac」はアセチルを意味する)で修飾されたガラクトース(「Gal」)又はN−アセチルガラクトサミン(「GalNAc」)残基をもつ場合がある。複合型N−グリカンは更に「分岐型」GlcNAcとコアフコース(「Fuc」)を含む分子鎖内置換をもつ場合がある。複合型N−グリカンは更に「トリマンノースコア」に複数の側鎖をもつ場合があり、多くの場合には「複数側鎖グリカン」と呼ぶ。「ハイブリッド」型N−グリカンはトリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端に少なくとも1個のGlcNAcをもち、トリマンノースコアの1,6マンノースアームに0個以上のマンノースをもつ。各種N−グリカンを「グリコフォーム」とも言う。]
[0051] 本明細書で使用する略語は当分野で通常使用されている通りであり、例えば上記の糖の略語を参照されたい。他の一般的な略語としては、「PNGアーゼ」ないし「グリカナーゼ」ないし「グルコシダーゼ」が挙げられ、いずれもペプチドN−グリコシダーゼF(EC3.2.2.18)を意味する。]
[0052] 本明細書で使用する「ベクター」なる用語はこれを連結した別の核酸分子を輸送することが可能な核酸分子を意味する。1種のベクターは「プラスミドベクター」であり、別のDNAセグメントをライゲーションすることができる環状2本鎖DNAループを意味する。他のベクターとしては、コスミド、細菌人工染色体(BAC)及び酵母人工染色体(YAC)が挙げられる。別の型のベクターはウイルスベクターであり、別のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができる(以下に詳述)。所定のベクターはこれらを導入した宿主細胞で自律複製することができる(例えば宿主細胞で機能する複製起点をもつベクター)。他のベクターは宿主細胞に導入すると、宿主細胞のゲノムに組込むことができ、従って、宿主ゲノムと共に複製される。更に、所定の好ましいベクターはこれらを機能的に連結した遺伝子の発現を誘導することができる。このようなベクターを本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と言う。]
[0053] 本明細書で使用する「該当配列」又は「該当遺伝子」なる用語は通常では宿主細胞で産生されない蛋白質を一般にコードする核酸配列を意味する。本明細書に開示する方法は宿主細胞ゲノムに安定的に組込まれた1種以上の該当配列又は遺伝子の効率的な発現を可能にする。該当配列の非限定的な例としては、酵素活性をもつ1種以上のポリペプチドをコードする配列が挙げられ、例えば宿主におけるN−グリカン合成に作用する酵素(例えばマンノシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミントランスポーター、ガラクトシルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ及びフコシルトランスフェラーゼ)が挙げられる。]
[0054] 「マーカー配列」又は「マーカー遺伝子」なる用語は宿主細胞内で配列の有無のポジティブ又はネガティブ選択を可能にする活性を発現することができる核酸を意味する。例えば、Pichia pastoris URA5遺伝子はこの遺伝子を含む細胞がウラシルの不在下で増殖する能力によりその存在を選択できるのでマーカー遺伝子である。この遺伝子を含む細胞が5−FOAの存在下で増殖できないことによりその存在をネガティブ選択することもできる。マーカー配列又は遺伝子は必ずしもポジティブ及びネガティブ選択性の両方を示す必要はない。Pichia pastorisに由来するマーカー配列又は遺伝子の非限定的な例としてはADE1、ARG4、HIS4及びURA3が挙げられる。抗生物質耐性マーカー遺伝子としては、カナマイシン、ネオマイシン、ゲネチシン(ないしG418)、パロモマイシン及びハイグロマイシン耐性遺伝子がこれらの抗生物質の存在下で増殖できるようにするために一般に使用されている。]
[0055] 「機能的に連結された」発現制御配列とは、該当遺伝子を制御するために発現制御配列が該当遺伝子と隣接している結合と、該当遺伝子を制御するためにトランス又は距離を隔てて作用する発現制御配列を意味する。]
[0056] 「発現制御配列」又は「調節配列」なる用語は同義で使用し、本明細書で使用する場合にはこれらの配列を機能的に連結したコーディング配列の発現に作用するために必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列は核酸配列の転写、転写後イベント及び翻訳を制御する配列である。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシングシグナルやポリアデニル化シグナル等の効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増加する配列(例えばリボソーム結合部位);蛋白質安定性を増加する配列;更に必要に応じて蛋白質分泌を増加する配列が挙げられる。このような制御配列の種類は宿主生物により異なり、原核生物では、このような制御配列として一般にプロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列が挙げられる。「制御配列」なる用語は最低限でその存在が発現に不可欠な全成分を含むものとし、更にその存在が有利な他の成分(例えばリーダー配列や融合パートナー配列)も含むことができる。]
[0057] 本明細書で使用する「組換え宿主細胞」(「発現宿主細胞」、「発現宿主系」、「発現系」又は単に「宿主細胞」)なる用語は組換えベクターを導入した細胞を意味するものとする。当然のことながら、このような用語は特定対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫も意味するものとする。突然変異又は環境的影響により子孫世代には所定の変異が生じる場合があるので、このような子孫は実際には親細胞と同一でない場合もあるが、やはり本明細書で使用する「宿主細胞」なる用語の範囲に含まれる。組換え宿主細胞は単離細胞でも培養増殖させた細胞株でもよいし、生体細胞又は生体内に存在する細胞でもよい。]
[0058] 「真核」なる用語は有核細胞又は生物を意味し、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞、動物細胞及び下等真核細胞が挙げられる。]
[0059] 「下等真核細胞」なる用語は酵母及び糸状菌を包含する。酵母及び糸状菌としては限定されないが、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichta membranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stipitis、Pichia methanolica、Pichia種、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces種、Schizosacchromyces pombe、Schizosacchroyces種、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces種、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium種、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Physcomitrella patens及びNeurospora crassa、Pichia種、任意Saccharomyces種、任意Schizosacchromyces種、Hansenula polymorpha、任意Kluyveromyces種、Candida albicans、任意Aspergillus種、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、任意Fusarium種、及びNeurospora crassaが挙げられる。]
[0060] 標準アッセイで測定した場合に改変後の遺伝子がこのような改変を含まない対応する遺伝子によりコードされる蛋白質に比較して少なくとも20%〜50%低い活性、特定態様では少なくとも40%低い活性又は少なくとも50%低い活性をもつ蛋白質をコードするように例えば1個以上のヌクレオチドの欠失、挿入、突然変異又は置換により蛋白質をコードする遺伝子が改変されているとき、この遺伝子の機能は「低下」していると言う。標準アッセイで測定した場合に改変後の遺伝子がこのような改変を含まない対応する遺伝子によりコードされる蛋白質に比較して少なくとも90%〜99%低い活性、特定態様では少なくとも95%低い活性又は少なくとも99%低い活性をもつ蛋白質をコードするように例えば1個以上のヌクレオチドの欠失、挿入、突然変異又は置換により蛋白質をコードする遺伝子が改変されているとき、この遺伝子の機能は「排除」されていると言う。]
[0061] 特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味をもつ。具体的な方法と材料を以下に記載するが、本発明の実施には本明細書に記載するものに類似又は等価の方法及び材料も使用することができ、このような方法及び材料は当業者に容易に認識されよう。本明細書に引用する全刊行物及び他の文献はその開示内容全体を本明細書に組込む。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書に従う。材料、方法及び実施例は単なる例証であり、如何なる点でも限定的ではない。]
図面の簡単な説明

[0062] 内在性PDI1遺伝子を発現させたPichia pastoris宿主細胞(パネルA)、内在性PDI1遺伝子とヒトPDI遺伝子の併存下(パネルB)、及びヒトPDI遺伝子を発現し、内在性PDI1遺伝子機能をノックアウトさせた細胞株(パネルC)でヒト抗DKK1抗体を産生させたディープウェルプレートスクリーニングからの代表的な結果を示す。
小胞体でのチオールレドックス反応におけるヒトPDIとそのコシャペロンの作用を示す。
図3A及び3Bは本発明を例証するための実施例に記載する酵母株の系図を示す。
図3A及び3Bは本発明を例証するための実施例に記載する酵母株の系図を示す。
図4A及び4Bは内在性PDI1をヒトPDI遺伝子(hPDI)で置換したPichia pastoris株と、内在性PDI1をヒトPDIで置換し、PMT1遺伝子を破壊した株(hPDI+Δpmtl)でヒト抗Her2抗体を産生させた振盪フラスコ(A)及び0.5Lバイオリアクター(B)発現試験からの代表的な結果を示す。抗体を回収し、非還元及び還元ポリアクリルアミドゲルでポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。レーン1〜2は抗Her2抗体をコードするプラスミドベクターpGLY2988で株yGLY2696を形質転換することにより作製した2個のクローンから産生された抗体を示し、レーン3〜6はPMT1遺伝子を欠失させた株yGLY2696を、抗Her2抗体をコードするプラスミドベクターpGLY2988で形質転換することにより作製した4個のクローンから産生された抗体を示す。
図4A及び4Bは内在性PDI1をヒトPDI遺伝子(hPDI)で置換したPichia pastoris株と、内在性PDI1をヒトPDIで置換し、PMT1遺伝子を破壊した株(hPDI+Δpmtl)でヒト抗Her2抗体を産生させた振盪フラスコ(A)及び0.5Lバイオリアクター(B)発現試験からの代表的な結果を示す。抗体を回収し、非還元及び還元ポリアクリルアミドゲルでポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。レーン1〜2は抗Her2抗体をコードするプラスミドベクターpGLY2988で株yGLY2696を形質転換することにより作製した2個のクローンから産生された抗体を示し、レーン3〜6はPMT1遺伝子を欠失させた株yGLY2696を、抗Her2抗体をコードするプラスミドベクターpGLY2988で形質転換することにより作製した4個のクローンから産生された抗体を示す。
内在性PDI1をヒトPDI遺伝子(hPDI)で置換したPichia pastoris株と、内在性PDI1をヒトPDIで置換し、PMT1遺伝子を破壊した株(hPDI+Δpmtl)でヒト抗DKK1抗体を産生させた振盪フラスコ発現試験からの代表的な結果を示す。抗体を回収し、非還元及び還元ポリアクリルアミドゲルでポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。レーン1及び3は抗DKK1抗体をコードするプラスミドベクターpGLY2260で株yGLY2696及びyGLY2690を形質転換することにより作製した2個のクローンから産生された抗体を示し、レーン2及び4はPMT1遺伝子を欠失させた株yGLY2696及びyGLY2690を、抗DKK1抗体をコードするプラスミドベクターpGLY2260で形質転換することにより作製した2個のクローンから産生された抗体を示す。
内在性PDI1をヒトPDI遺伝子(hPDI)で置換したPichia pastoris株と、内在性PDI1をヒトPDIで置換し、PMT4遺伝子を破壊した株(hPDI+Δpmt4)と、内在性PDI1のみを発現し、PMT4遺伝子を破壊した株(PpPDI+Δpmt4)でヒト抗Her2抗体を産生させた0.5Lバイオリアクター発現試験からの結果を示す。抗体を回収し、非還元ポリアクリルアミドゲルでポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。レーン1及び2は抗Her2抗体をコードするプラスミドベクターpGLY2988で株yGLY24−1を形質転換することにより作製した2個のクローンから産生された抗体を示し、レーン3〜5はPMT4遺伝子を欠失させた株yGLY2690の形質転換により作製した3個のクローンから産生された抗Her2抗体を示す。
内在性PDI1をヒトPDIで置換し、PMT4遺伝子を破壊したPichia pastoris株(hPDI+Δpmt4)と、内在性PDI1のみを発現し、PMT4遺伝子を破壊した株(PpPDI+Δpmt4)でヒト抗CD20抗体を産生させた振盪フラスコ発現試験からの結果を示す。抗体を回収し、非還元及び還元ポリアクリルアミドゲルでポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。レーン1は抗CD20抗体をコードするプラスミドベクターpGLY3200で形質転換した株yGLY24−1から産生された抗体を示し、レーン2〜7はPMT4遺伝子を欠失させた株yGLY2690の形質転換により作製した6個のクローンから産生された抗CD20抗体を示す。
ヒトPDI(hPDI)をコードし、Pichia pastoris PDI1遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY642の構築を示す。
ヒトERO1α(hERO1α)をコードし、Pichia pastoris PrB1遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY2232の構築を示す。
ヒトGRP94をコードし、Pichia pastoris PEP4遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY2233の構築を示す。
T.reesei α−1,2マンノシダーゼ(TrMNS1)とマウスα−1,2マンノシダーゼIA(FB53)をコードし、Pichia pastorisPRO遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGFI207tの構築を示す。
T.reesei α−1,2マンノシダーゼ(TrMNS1)をコードし、Pichia pastoris PRO遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY1162の構築を示す。
抗DKK1抗体重鎖(GFI710H)及び軽鎖(GFI710L)又は2本の軽鎖(GFI710L)をコードし、Pichia pastoris TRP2遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY2260及び2261の地図。
抗ADDL抗体重鎖(Hc)及び軽鎖(Lc)をコードし、Pichia pastoris TRP2遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY2012の地図。
抗HER2抗体(抗HER2)重鎖(Hc)及び軽鎖(Lc)をコードし、Pichia pastoris TRP2遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY2988の地図。
抗CD20抗体重鎖(Hc)及び軽鎖(Lc)をコードし、Pichia pastoris TRP2遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY3200の地図。
Pichia pastoris PMR1をコードし、Pichia pastoris URA6遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY3822の地図。
Arabidopsis thaliana ECA1(AtECA1)をコードし、Pichia pastoris URA6遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY3827の地図。
ヒトCRT(hCRT)とヒトERp57(hERp57)をコードし、Pichia pastoris HIS3遺伝子座を標的とするプラスミドベクターpGLY1234の地図。] 図3A 図4A
[0063] (発明の詳細な記述)
分子シャペロンは抗体の折り畳みと分泌に重要な役割を果たす。特に、シャペロン蛋白質の1種である蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は抗体重鎖及び軽鎖を結合する分子鎖間及び分子鎖内ジスルフィド結合形成を触媒するように機能する。蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は非触媒反応に比較してジスルフィド含有蛋白質の回収率を実質的に増加又は実質的に低下させることができ、ジスルフィド含有蛋白質の発現には小胞体(ER)における高濃度のPDIが不可欠である[Puig and Gilbert,J.Biol.Chem.,269:7764−7771(1994)]。ヒトPDIシャペロン蛋白質を過剰発現及び/又は内在性PDI1を過剰発現させることによりPichia pastorisにおける抗体発現レベルを増加しようとする従来の試みは成功が限られている。本発明者らは直接遺伝子操作により抗体収率改善の可能性を探るためにPichia pastorisにおけるシャペロン経路のヒト化に着手した。]
[0064] 本発明者らは、Pichia pastorisモデルにおいて内在性PDI1蛋白質をコードする酵母遺伝子を、異種PDI蛋白質をコードする発現カセットで置換した結果、組換え酵母細胞により産生される組換えヒト抗体の収率は内在性PDI1蛋白質のみを発現した組換え酵母細胞により産生される収率に比較して約5倍に改善され、異種PDI蛋白質と内在性PDI1蛋白質を同時発現した組換え酵母細胞により産生される収率に比較して約3倍に増加することを見出した。]
[0065] 本発明の機序を特定の科学理論に限定するものではないが、非相同組換え蛋白質は分泌経路におけるその折り畳みとアセンブリ中に宿主細胞シャペロン蛋白質よりも効率的に異種シャペロン蛋白質と相互作用すると考えられる。同時発現の場合には、異種シャペロン蛋白質はその基質、即ち非相同組換え蛋白質に関して内在性シャペロン蛋白質と競合すると思われる。更に、異種PDI蛋白質と組換え蛋白質は同一種に由来すると考えられる。従って、内在性シャペロン蛋白質をコードする遺伝子を、異種シャペロンをコードする発現カセットで置換する方法は、単に異種シャペロン蛋白質を内在性シャペロン蛋白質と同時発現する組換え蛋白質を生産するための組換え宿主細胞を作製するための良好な手段であると思われる。]
[0066] 更に、組換え宿主細胞で異種PDI蛋白質と別の異種コシャペロン蛋白質(例えばERO1α及び/又はGRP94蛋白質)を過剰発現させることにより、組換え蛋白質収率を更に改善することができる。他の態様において、組換え宿主細胞は更にFAD、FLC1及びERp44蛋白質を過剰発現することができる。これらの遺伝子は機能的に近縁であるので、これらの遺伝子をコードする核酸分子を単一ベクターに導入し、宿主細胞に形質転換することが望ましいと思われる。蛋白質の発現は蛋白質をコードする核酸分子を異種又は同種プロモーターと機能的に連結することにより実施することができる。特定態様において、宿主細胞がPichia pastorisであるとき、異種コシャペロン蛋白質の1種以上の発現はKAR2プロモーター等の同種プロモーター又は別のER特異的遺伝子に由来するプロモーターにより実施することができる。他の態様において、全ての異種シャペロン蛋白質及び組換え蛋白質は同一種に由来する。]
[0067] モデルとしてPichia pastorisを使用する実施例で実証するように、本明細書に開示する方法は酵母や糸状菌等の下等真核宿主細胞からの組換えヒト糖蛋白質(抗体を含む)の生産に特に有用である。例えば、該当蛋白質の折り畳みとアセンブリはヒトPDIと場合により他の哺乳動物由来シャペロン蛋白質(例えばERO1α及びGRP94)により助長され、収率を改善するので、Pichia pastorisからの組換え蛋白質の分泌はより効率的に進行する。実施例で実証するように、本発明の方法は活性を達成するために重鎖と軽鎖をジスルフィド結合により正しく結合する必要がある抗体生産に特に有利であろう。]
[0068] 従って、本発明のこれらの方法は下等真核宿主細胞、特に酵母及び糸状菌(例えばPichia pastoris)からの組換え抗体の分泌における生産性が低いという問題の対処に関して大きな利点を提供する。過去に、酵母、ヒト又はマウスシャペロン蛋白質が過剰発現されているが、その成功が限られていたこととは対照的に、本発明は宿主細胞の内在性シャペロン蛋白質を異種シャペロン蛋白質で置換することにより、正しく折り畳まれ、分泌される異種蛋白質(例えば抗体)の生産性の改善が得られることを立証する。蛋白質ホモログをコードする内在性遺伝子の欠損と哺乳動物由来シャペロン蛋白質の過剰発現を組合せると、哺乳動物由来蛋白質の過剰発現のみに比較して糖蛋白質の生産性は予想外に改善される。]
[0069] 本発明者らは更に、上記のように1個以上のシャペロン遺伝子をコードする核酸分子で形質転換した宿主細胞を更に遺伝子操作し、これらの細胞から産生される組換え蛋白質の他の特徴を改善できることを見出した。これは特に酵母や糸状菌等の下等真核宿主細胞からの組換え哺乳動物糖蛋白質産生の場合に該当する。]
[0070] 例えば、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicans及びPichia pastoris等の下等真核細胞は分泌蛋白質のセリル及びスレオニル残基へのマンノース転移に関与する蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)と呼ばれる遺伝子ファミリーを含む。本発明者らは、1個以上のヒト化又はキメラシャペロン遺伝子を発現させるように遺伝子改変したPichia pastoris細胞株が1個以上のPMT遺伝子の欠失に良好に耐えることができ、細胞増殖又は蛋白質発現に殆ど又は全く影響を与えないことを発見した。欠失させることができるPMT遺伝子としては、PMT1、PMT2、PMT4、PMT5及びPMT6が挙げられる。一般に、OCH1遺伝子とPMT遺伝子の両方を欠失させたPichia pastoris宿主細胞は増殖が不良であるか又は全く増殖しない。ヒト様N−グリカンをもつヒト糖蛋白質を産生することができる組換えPichia pastoris宿主細胞を構築するにはOCH1遺伝子の欠損又は機能的ノックアウトが必要である。O−グリコシル化を排除又は低下したヒト糖蛋白質を生産することが望ましいので、ヒト様N−グリカンをもつヒト糖蛋白質を産生することも可能な組換えPichia pastoris宿主細胞でO−グリコシル化を低下させるための手段を見出すことが必要であった。本発明者らは、本明細書に開示するような1個以上のシャペロン遺伝子を含むPichia pastoris宿主細胞を更に遺伝子改変し、OCH1遺伝子の欠損又は機能的ノックアウトと1個以上のPMT遺伝子(例えばPMT1、PMT4、PMT5及び/又はPMT6)の欠損又は機能的ノックアウトを含むようにできることを見出した。これらの組換え細胞は生存可能であり、ヒト様N−グリカンの収率が高く、O−グリコシル化の低下したヒト糖蛋白質を産生する。更に、PMT蛋白質阻害剤の存在下で細胞を増殖させることにより、O−グリコシル化を更に低下させることができた。]
[0071] 実施例に実証するように、本発明の宿主細胞は化学的PMT蛋白質阻害剤及び/又はPMT遺伝子の欠失に対する耐性を示すので、本発明者らは本明細書に開示する方法が特性を改善した酵母や糸状菌等の下等真核宿主細胞から抗体を含む組換えヒト糖蛋白質を生産するのに特に有用であることを立証する。実施例に示すように、組換え蛋白質は従来の下等真核発現システムに比較してO−グリコシル化含有量とO−グリカン長が低下した。実施例に実証するように、本発明の方法は活性を達成するために重鎖と軽鎖をジスルフィド結合により正しく結合する必要があり、抗体のO−グリコシル化を低下するか又はなくすことが必要な抗体生産に特に有利であろう。]
[0072] 本発明者らは更に、Pichia pastorisゴルジCa2+ATPアーゼ(PpPMR1)又はArabidopsis thalianaERCa2+ATPアーゼ(AtECA1)の過剰発現の結果、内在性PDI1をヒトPDIで置換したが、Ca2+ATPアーゼを発現しなかった上記株に比較してO−グリカン含有量が約2分の1に低下することを発見した。従って、他の実施形態において、本明細書に開示する宿主細胞の任意1種は更に内在性又は外来ゴルジ又はER Ca2+ATPアーゼをコードする1個以上の核酸分子を含むことができ、Ca2+ATPアーゼは異種プロモーターと機能的に連結されている。これらの宿主細胞はO−グリコシル化の低下した糖蛋白質を生産するために使用することができる。]
[0073] カルレティキュリン(CRT)は小胞体の内腔で主要なCa(2+)結合(貯蔵)蛋白質として作用する多機能性蛋白質である。核では、転写調節に役割を果たすらしいことも分かっている。カルレティキュリンは核内受容体スーパーファミリーのDNA結合ドメインにおけるアミノ酸配列とほぼ同一の合成ペプチドKLGFFKR(配列番号75)と結合する。カルレティキュリンは抗Ro/SSA抗体を含む全身性エリテマトーデス及びシェーグレン症候群患者の所定の血清中の抗体と結合し、種間で高度に保存されており、小胞体と筋小胞体に位置し、カルシウムと結合することができる。カルレティキュリンは誤って折り畳まれた蛋白質と結合し、小胞体からゴルジ装置に輸送されないようにする。]
[0074] ERp57は小胞体のシャペロン蛋白質であり、レクチンシャペロンカルレティキュリンとカルネキシンとに相互作用し、新規に合成された糖蛋白質の折り畳みを調節する。この蛋白質は曾てホスホリパーゼであると考えられていたが、この蛋白質は実際には蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ活性をもつことが立証された。従って、ERp57は小胞体(ER)の内腔蛋白質であり、蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)ファミリーのメンバーである。レクチンとこの蛋白質の複合体はその糖蛋白質基質におけるジスルフィド結合の形成を促進することにより蛋白質折り畳みを媒介すると考えられる。典型的なPDIとは対照的に、ERp57は新規に合成された糖蛋白質と特異的に相互作用する。]
[0075] 本発明者らは更にPichia pastorisでヒトCRTとヒトERp57を過剰発現させると、内在性PDI1をヒトPDIで置換したが、hCRTとhERp57を発現しなかった株に比較してO−グリカン含有量が約3分の1に低下することを見出した。従って、他の実施形態において、本発明の宿主細胞の任意1種は更に各々異種プロモーターと機能的に連結されたカルレティキュリンとERp57蛋白質をコードする1個以上の核酸分子を含むことができる。これらの宿主細胞はO−グリコシル化の低下した糖蛋白質を生産するために使用することができる。]
[0076] 従って、本発明の方法は下等真核宿主細胞、特に酵母及び糸状菌(例えばPichia pastoris)からの組換え抗体の分泌における生産性が低いという問題の対処に関して大きな利点を提供する。過去に、酵母、ヒト又はマウスシャペロン蛋白質が過剰発現されているが、その成功が限られていたこととは対照的に、本発明は宿主細胞の内在性シャペロン蛋白質を異種シャペロン蛋白質で置換することにより、正しく折り畳まれ、分泌される異種蛋白質(例えば抗体)の生産性の改善が得られることを立証する。蛋白質ホモログをコードする内在性遺伝子の欠失と哺乳動物由来シャペロン蛋白質の過剰発現を組合せると、哺乳動物由来蛋白質の過剰発現のみに比較して糖蛋白質の生産性は予想外に改善される。]
[0077] 従って、本発明は下等真核宿主細胞に存在する過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法として、内在性シャペロン蛋白質の代わりに異種シャペロン蛋白質を宿主細胞で発現させ、過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法を提供する。内在性シャペロン蛋白質をコードする遺伝子を破壊又は欠損させ、宿主細胞に存在するか又は提供される発現ベクターでコードされる異種シャペロン蛋白質をコードする核酸分子を発現させ、過剰発現遺伝子産物の産生を増加することにより、宿主細胞からの過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法も提供する。更に、宿主細胞からの過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法として、内在性シャペロン蛋白質の代わりに少なくとも1種の異種シャペロン蛋白質を宿主細胞で発現させる方法も提供する。本発明に関して、過剰発現遺伝子産物とはこの遺伝子産物の通常の内在性発現よりも高レベルで発現される産物である。]
[0078] 一実施形態において、前記方法は、内在性シャペロン蛋白質の発現を欠損又は破壊する段階と、1種以上の異種シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物の発現を宿主細胞で実施する段階と、過剰発現遺伝子産物の分泌に適した条件下で前記宿主細胞を培養する段階を含む。シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物の発現はシャペロン蛋白質をコードする核酸分子と過剰発現遺伝子産物をコードする核酸分子の発現を誘導することにより実施することができ、前記核酸分子は宿主細胞に存在する。]
[0079] 別の実施形態において、異種シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物の発現は第1及び第2の核酸分子の発現に適した条件下で内在性シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の遺伝子の発現を破壊又は欠損させた宿主細胞に異種シャペロン蛋白質をコードする第1の核酸分子と過剰発現させる遺伝子産物をコードする第2の核酸分子を導入することにより実施される。他の態様では、前記第1及び第2の核酸分子の一方又は両方が発現ベクターに存在する。他の態様では、前記第1及び第2の核酸分子の一方又は両方が発現/組込みベクターに存在する。別の実施形態において、異種シャペロン蛋白質の発現はシャペロン蛋白質をコードする核酸分子の発現を誘導することにより実施され、内在性シャペロン蛋白質をコードする遺伝子を欠損又は破壊した宿主細胞に核酸分子を導入する。第2の蛋白質の発現は前記第2の遺伝子産物をコードする核酸分子を宿主細胞に導入することにより、過剰発現させる遺伝子産物をコードする核酸分子の発現を誘導することにより実施される。]
[0080] 本発明は更に、下等真核宿主細胞に存在するO−グリコシル化の低下した過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法として、蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)ファミリーの1個以上の遺伝子を破壊又は欠失させた宿主細胞で内在性シャペロン蛋白質の代わりに異種シャペロン蛋白質を発現させ、O−グリコシル化の低下した過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法を提供する。内在性シャペロン蛋白質をコードする遺伝子と、PMTをコードする遺伝子を破壊又は欠損させ、宿主細胞に存在するか又は提供される発現ベクターでコードされる異種シャペロン蛋白質をコードする核酸分子を発現させ、過剰発現遺伝子産物の産生を増加することにより、宿主細胞からのO−グリコシル化の低下した過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法も提供する。更に、宿主細胞からのO−グリコシル化の低下した過剰発現遺伝子産物の産生を増加する方法として、少なくとも1個のPMT遺伝子を破壊又は欠損させた宿主細胞で内在性シャペロン蛋白質の代わりに少なくとも1種の異種シャペロン蛋白質を発現させる段階を含む方法も提供する。]
[0081] 一実施形態において、前記方法は、少なくとも1種の内在性シャペロン蛋白質と少なくとも1個のPMT遺伝子の発現を欠損又は破壊する段階と、1種以上の異種シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物の発現を宿主細胞で実施する段階と、O−グリコシル化の低下した過剰発現遺伝子産物の分泌に適した条件下で前記宿主細胞を培養する段階を含む。シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物の発現は、シャペロン蛋白質をコードする核酸分子と過剰発現遺伝子産物をコードする核酸分子の発現を誘導することにより実施することができ、前記核酸分子は宿主細胞に存在する。]
[0082] 別の実施形態において、異種シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物の発現は、第1及び第2の核酸分子の発現に適した条件下で、内在性シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の遺伝子と少なくとも1個のPMT遺伝子の発現を破壊又は欠損させた宿主細胞に、異種シャペロン蛋白質をコードする第1の核酸分子と、過剰発現させる遺伝子産物をコードする第2の核酸分子を導入することにより実施される。他の態様では、前記第1及び第2の核酸分子の一方又は両方が発現ベクターに存在する。他の態様では、前記第1及び第2の核酸分子の一方又は両方が発現/組込みベクターに存在する。別の実施形態において、異種シャペロン蛋白質の発現は、内在性シャペロン蛋白質をコードする遺伝子を欠損又は破壊した宿主細胞でシャペロン蛋白質をコードする核酸分子の発現を誘導することにより実施される。第2の蛋白質の発現は、前記第2の遺伝子産物をコードする核酸分子を宿主細胞に導入することにより、過剰発現させる遺伝子産物をコードする核酸分子の発現を誘導することにより実施される。]
[0083] 上記実施形態の任意1種の別の態様において、異種シャペロン蛋白質は内在性シャペロン蛋白質の種又は分類に対応する。例えば、宿主細胞が酵母細胞であり、内在性シャペロン蛋白質が蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)である場合には、対応する異種PDIは哺乳動物PDIとすることができる。上記実施形態の任意1種の更に別の態様において、特定宿主細胞で発現される異種シャペロン蛋白質は過剰発現遺伝子産物の種と同一種に由来する。例えば、過剰発現遺伝子産物がヒト蛋白質である場合には、異種シャペロン蛋白質はヒトシャペロン蛋白質であり、過剰発現遺伝子産物がウシ蛋白質である場合には、異種シャペロン蛋白質はウシシャペロン蛋白質である。]
[0084] シャペロン蛋白質としては、蛋白質の分泌を助長又は増加することが可能な任意シャペロン蛋白質が挙げられる。特に、蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ及び熱ショック70(hsp70)蛋白質ファミリーのメンバーが考えられる。構造的及び機能的類似性をもち、一般にストレスにより発現を誘導される熱ショック蛋白質70蛋白質ファミリーを表すために本明細書では小文字の「hsp70」を使用する。約70,000の分子量をもち、当分野で熱ショック蛋白質−70として知られている種の単独の熱ショック蛋白質とhsp70蛋白質ファミリーを区別するために、本明細書では大文字のHSP70を使用する。従って、所定種に由来するhsp70蛋白質ファミリーの各メンバーはこの種に由来するHSP70蛋白質に対して構造類似性をもつ。]
[0085] 本発明は過剰発現遺伝子産物の分泌を刺激することが可能な任意シャペロン蛋白質に関する。hsp70蛋白質ファミリーのメンバーは構造的に相同であることが知られており、KAR2、HSP70、BiP、SSA1−4、SSB1、SSC1及びSSD1遺伝子産物等の酵母hsp70蛋白質と、HSP68、HSP72、HSP73、HSC70、クラスリン非被覆ATPアーゼ、IgG重鎖結合蛋白質(BiP)、グルコース調節蛋白質75、78及び80(GRP75、GRP78及びGRP80)等の真核hsp70蛋白質が挙げられる。更に、本発明によると、酵母KAR2又は哺乳動物BiPポリペプチド配列に対して十分な相同性をもつ任意hsp70シャペロン蛋白質を本発明の方法で使用し、過剰発現遺伝子産物の分泌を刺激することができる。PDIファミリーのメンバーも構造的に相同であり、本発明の方法に従って使用することができる任意PDIが考えられる。特に、哺乳動物(ヒトを含む)及び酵母PDI、プロリル−4−ヒドロキシラーゼβ−サブユニット、ERp57、ERp29、ERp72、GSBP、ERO1α、GRP94、GRP170、BiP及びT3BPと、酵母EUG1が考えられる。多くの人体治療用蛋白質はヒト由来であるので、本発明の方法の1特定態様は異種シャペロン蛋白質がヒト由来であるという点にある。更に他の実施形態において、好ましい異種シャペロン蛋白質はPDI蛋白質、特にヒト由来PDI蛋白質である。]
[0086] GAPDH等の構成的プロモーターを使用してヒトBiPを過剰発現させることにより酵母細胞株における異種ヒト蛋白質の発現レベルを増加させようとする試みは殆ど成功していない。ヒトBiPのホモログであるPichia pastoris KAR2のノックアウトは細胞に有害であった。ヒトATPアーゼドメインをPichia pastoris KAR2のATPアーゼドメインで置換し、Pichia pastorisに由来するKAR2又は他のER特異的プロモーターの制御下でヒトBiPペプチド結合ドメインに融合したキメラBiP遺伝子を構築することにより、従来技術の欠点を解決することができる。上記のような内在性PDI1遺伝子の置換をキメラBiPとヒトERdj3の使用に組合せることにより収率を更に改善することができる。]
[0087] 他の態様では、過剰発現遺伝子産物は分泌遺伝子産物である。過剰発現遺伝子産物が分泌されるか否かを観測する方法は当業者に容易に入手可能である。例えば、Goeddel,(Ed.)1990,Gene Expression Technology,Methodsin Enzymology,Vol 185,Academic Press、及びSambrookら,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vols.1−3,Cold Spring Harbor Press,N.Y.は分泌遺伝子産物の検出方法を記載している。]
[0088] 過剰発現遺伝子産物を分泌させるためには、過剰発現遺伝子産物の分泌に十分な条件下で宿主細胞を培養する。このような条件としては、細胞による分泌を可能にする温度、栄養及び細胞密度条件が挙げられる。更に、このような条件は細胞が蛋白質の転写、翻訳及びある細胞区画から別の細胞区画への移動の基本的な細胞機能を実施できる条件である。]
[0089] 更に、当業者に公知の通り、分泌遺伝子産物は本発明の宿主細胞を維持又は増殖させるために使用される培地中で検出することができる。培地は公知手法(例えば遠心又は濾過)により宿主細胞から分離することができる。その後、過剰発現遺伝子産物の特徴的な既知特性を利用することにより無細胞培地で過剰発現遺伝子産物を検出することができる。このような特性としては、過剰発現遺伝子産物の顕著な免疫、酵素又は物理的特性が挙げられる。例えば、過剰発現遺伝子産物がユニークな酵素活性をもつ場合には、宿主細胞により使用される培地でこの活性のアッセイを実施することができる。更に、所定の過剰発現遺伝子産物に対して反応性の抗体が入手可能な場合には、任意の公知免疫アッセイで遺伝子産物を検出するためにこのような抗体を使用することができる(Harloweら,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。]
[0090] 更に、分泌遺伝子産物は、遺伝子産物の分泌を容易にする異種シグナル又はリーダーペプチドを遺伝子産物に付加した融合蛋白質とすることができる。分泌シグナルペプチドは不連続なアミノ酸配列であるため、宿主細胞は遺伝子産物を細胞内膜及び外膜から細胞外環境に誘導する。分泌の対象となる新生ポリペプチド遺伝子産物のN末端には分泌シグナルペプチドが存在する。他の真核分泌シグナルも特定アミノ酸に結合した糖鎖形態、即ちグリコシル化分泌シグナルとして遺伝子産物のポリペプチド鎖に沿って存在することができる。]
[0091] N末端シグナルペプチドは約10〜約30アミノ酸の疎水性ドメインを含み、その前に約2〜約10アミノ酸の短い荷電ドメインが存在する場合もある。更に、シグナルペプチドは分泌の対象となる遺伝子産物のN末端に存在する。一般に、シグナル配列の特定配列は重要ではないが、シグナル配列はアラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、メチオニン(Met)等の疎水性アミノ酸リッチである。]
[0092] 多数のシグナルペプチドが公知である(Michaelisら,Ann.Rev.Microbiol.36:425(1982))。例えば、酵母酸ホスファターゼ、酵母インベルターゼ及び酵母α因子シグナルペプチドが異種ポリペプチドコーディング領域に結合され、異種ポリペプチドの分泌に使用するのに成功している(例えばSatoら,Gene 83:355−365(1989);Changら,Mol.Cell.Biol.6:1812−1819(1986);及びBrakeら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:4642−4646(1984)参照)。従って、当業者は更に5’末端にシグナルペプチドをもつ過剰発現遺伝子産物のコーディング領域をコードする核酸分子を容易に設計又は獲得することができる。]
[0093] 本発明の方法により分泌することが好ましい過剰発現遺伝子産物の例としては、酵素、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、ワクチン、抗体等の哺乳動物遺伝子産物が挙げられる。より特定的には、過剰発現遺伝子産物としては限定されないが、エリスロポエチン、インスリン、ソマトトロピン、成長ホルモン放出因子、血小板由来増殖因子、表皮増殖因子、トランスフォーミング増殖因子α、トランスフォーミング増殖因子β、表皮増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、神経成長因子、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子II、血液凝固因子VIII、スーパーオキシドジスムターゼ、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、顆粒球コロニー刺激因子、多系列コロニー刺激活性、顆粒球−マクロファージ刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、T細胞増殖因子、リンホトキシン、免疫グロブリン、抗体等の遺伝子産物が挙げられる。更に融合蛋白質も挙げられ、限定されないが、免疫グロブリン又は抗体の定常領域に融合したペプチド及びポリペプチドが挙げられる。特に有用な過剰発現遺伝子産物はヒト遺伝子産物である。]
[0094] 「抗体」、「複数の抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語は組換えDNA技術により作製される任意組換えモノクローナル抗体を包含し、更にヒト化抗体とキメラ抗体も包含する。]
[0095] 本発明の方法はワクチンとして使用することができる任意過剰発現遺伝子産物の分泌を増加するように容易に適応させることができる。ワクチンとして使用することができる過剰発現遺伝子産物としては、哺乳動物病原体の任意構造遺伝子産物、膜会合型遺伝子産物、膜結合型遺伝子産物又は分泌型遺伝子産物が挙げられる。哺乳動物病原体としては、哺乳動物に感染又は攻撃することが可能なウイルス、細菌、単細胞又は多細胞寄生虫が挙げられる。例えば、ウイルスワクチンとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、リケッチア(R.rickettsii)、ワクシニア、赤痢菌、ポリオウイルス、アデノウイルス、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、デング熱ウイルス、B型日本脳炎、水痘帯状疱疹(Varicella zoster)、サイトメガロウイルス、A型肝炎、ロタウイルス等のウイルスに対するワクチンと、ライム病、麻疹、黄熱病、流行性耳下腺炎、狂犬病、ヘルペス、インフルエンザ、パラインフルエンザ等のウイルス疾患に対するワクチンが挙げられる。細菌ワクチンとしては、コレラ菌(Vibrio cholerae)、チフス菌(Salmonella typhi)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Hemophilus influenza)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebactenum diphtheriae)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、リン菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、コクシジオイデス・イミチス菌(Coccidioides immitis)等の細菌に対する細菌ワクチンが挙げられる。]
[0096] 一般に、本発明の過剰発現遺伝子産物と異種シャペロン蛋白質は組換え発現され、即ち遺伝子産物又はシャペロン蛋白質をコードする核酸分子を発現ベクターに配置することにより発現される。このような発現ベクターは配列が遺伝子産物又はシャペロン蛋白質をコードする核酸分子と機能的に連結されているときに遺伝子産物又は異種シャペロン蛋白質の発現を生じる配列を最低限含む。このような発現ベクターは更に複製起点、選択マーカー、転写又は終結シグナル、セントロメア、自律複製配列等の他のエレメントを含むことができる。]
[0097] 本発明によると、過剰発現遺伝子産物及び/又は異種シャペロン蛋白質の調節発現を可能にするように、夫々過剰発現遺伝子産物と異種シャペロン蛋白質をコードする第1及び第2の核酸分子を発現ベクター内に配置することができる。異種シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物を同一発現ベクターでコードさせてもよいが、過剰発現遺伝子産物をコードするベクターとは異なる発現ベクターで異種シャペロン蛋白質をコードすることが好ましい。異種シャペロン蛋白質と過剰発現遺伝子産物をコードする核酸分子を別々の発現ベクターに配置すると、過剰発現遺伝子産物の分泌量を増加することができる。]
[0098] 本明細書で使用する発現ベクターは複製可能又は複製不能な発現ベクターとすることができる。複製可能な発現ベクターは宿主細胞染色体DNAから独立して複製することもできるし、又はこのようなベクターは宿主細胞染色体DNAに組込まれているために複製することができる。宿主細胞染色体DNAに組込まれると、このような発現ベクターは多少の構造エレメントを失う可能性があるが、遺伝子産物又はシャペロン蛋白質をコードする核酸分子と、遺伝子産物又は異種シャペロン蛋白質の発現を誘導することが可能なセグメントを保持する。従って、本発明の発現ベクターは染色体組込み又は染色体非組込み発現ベクターとすることができる。]
[0099] 別の実施形態では、組込み又は非組込み発現ベクターを宿主細胞に導入することにより1種以上の異種シャペロン蛋白質を宿主細胞で過剰発現させる。少なくとも1種のシャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の発現ベクターの導入後、遺伝子産物をコードする内在性遺伝子の発現を誘導するか又は遺伝子産物をコードする発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、遺伝子産物を過剰発現させる。別の実施形態では、少なくとも1種の異種シャペロン蛋白質を構成的又は誘導的に発現する細胞株を樹立する。過剰発現させる遺伝子産物をコードする発現ベクターをこのような細胞株に導入し、過剰発現遺伝子産物の分泌増加を達成する。]
[0100] 発現ベクターが異種シャペロン蛋白質又は過剰発現遺伝子産物の発現を可能にし、従って、選択された宿主細胞種におけるこのような遺伝子産物の分泌を助長する限り、本発明の発現ベクターは一方の宿主細胞種(例えば大腸菌)で複製可能であり、別の宿主細胞種(例えば真核宿主細胞)では殆ど又は全く複製しない。]
[0101] 本明細書に記載するような発現ベクターとしては、所望遺伝子、即ち本発明のシャペロン蛋白質又は過剰発現遺伝子産物をコードする遺伝子を制御下に発現させるように構築したDNA又はRNA分子が挙げられる。このようなベクターは更に本発明のシャペロンポリペプチド又は本発明の過剰発現遺伝子産物をコードする核酸分子と機能的に連結された核酸分子セグメントをコードする。この関連で機能的に連結されているとは、このようなセグメントがシャペロン蛋白質又は過剰発現遺伝子産物をコードする核酸分子の発現を実施できることを意味する。これらの核酸配列としては、プロモーター、エンハンサー、上流制御エレメント、転写因子又はリプレッサー結合部位、終結因子及び該当宿主細胞で対照遺伝子発現を制御することができる他のエレメントが挙げられる。ベクターはベクター、バクテリオファージ、コスミド又はウイルスが好ましい。]
[0102] 本発明の発現ベクターは酵母又は哺乳動物細胞で機能する。酵母ベクターとしては、酵母2μサークルとその誘導体、酵母自律複製配列をコードする酵母ベクター、酵母ミニ染色体、任意酵母組込みベクター等が挙げられる。多種の酵母ベクターの一覧がParentら(Yeast 1:83−138(1985))に記載されている。]
[0103] 遺伝子産物の発現を実施することが可能なエレメント又は核酸配列としては、プロモーター、エンハンサーエレメント、上流活性化配列、転写終結シグナル及びポリアデニル化部位が挙げられる。本発明の発現ベクターではこのようなプロモーター及び転写調節エレメントを単独又は組合せて使用することが想定される。更に、遺伝子操作及び突然変異させた調節配列も本発明に含まれる。]
[0104] プロモーターは遺伝子発現を制御するためのDNA配列エレメントである。特に、プロモーターは転写開始部位を指定し、TATAボックス及び上流プロモーターエレメントが挙げられる。選択されるプロモーターは選択される特定宿主系で機能的であると予想されるものである。例えば、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces lactis又はPichia pastoris等の酵母宿主細胞を使用する場合には、酵母プロモーターを本発明の発現ベクターで使用し、Aspergillus niger、Neurospora crassa又はTricoderma reesei等の宿主細胞では真菌プロモーターを使用する。酵母プロモーターの例としては限定されないが、GAPDH、AOX1、GAL1、PGK、GAP、TPI、CYC1、ADH2、PHO5、CUP1、MFα1、PMA1、PDI、TEF及びGUT1プロモーターが挙げられる。Romanosら(Yeast 8:423−488(1992))は酵母プロモーターと発現ベクターについて概説している。]
[0105] 本明細書に開示する核酸分子と機能的に連結されるプロモーターは構成的プロモーターでも誘導プロモーターでもよい。誘導プロモーターとは、転写因子と結合すると、速度を増加又は低下して転写を誘導するプロモーターである。本明細書で使用する転写因子としては、プロモーターの調節又は制御領域と結合することができ、従って、転写に作用することが可能な任意因子が挙げられる。転写因子の合成又は宿主細胞内におけるプロモーター結合能は宿主をインデューサーに暴露するか又はインデューサーを宿主細胞環境から除去することにより制御することができる。従って、誘導プロモーターの発現を調節するためには、インデューサーを付加するか、又は宿主細胞の増殖培地から除去する。このようなインデューサーとしては、糖類、リン酸塩、アルコール、金属イオン、ホルモン、熱、冷却等が挙げられる。例えば、酵母で一般に使用されるインデューサーはグルコース、ガラクトース等である。]
[0106] 選択される転写終結配列は選択される特定宿主細胞で機能的なものである。例えば、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces lactis又はPichia pastoris等の酵母宿主細胞を使用する場合には、酵母転写終結因子を本発明の発現ベクターで使用し、Aspergillus niger、Neurospora crassa又はTricoderma reesei等の宿主細胞では真菌転写終結配列を使用する。転写終結配列としては限定されないが、Saccharomyces cerevisiae CYC転写終結配列(ScCYC TT)、Pichia pastorisALG3転写終結配列(ALG3 TT)、及びPichia pastoris PMA1転写終結配列(PpPMA1 TT)が挙げられる。]
[0107] 本発明の発現ベクターは更に選択マーカーをコードすることができる。選択マーカーは選択マーカーをもつベクターで形質転換された細胞を非形質転換細胞から区別できるように識別可能な形質を宿主細胞に付与する遺伝子機能である。マーカーに関連する遺伝子機能を宿主細胞集団に維持するためにベクターへの選択マーカーの付加を使用することもできる。このような選択マーカーは任意の容易に同定されるドミナント形質(例えば薬剤耐性、細胞栄養を合成又は代謝する能力等)を付与することができる。]
[0108] 酵母選択マーカーとしては、酵母宿主細胞に必須細胞栄養素(例えばアミノ酸)を合成させる薬剤耐性マーカー及び遺伝子機能が挙げられる。酵母で一般に使用される薬剤耐性マーカーとしては、クロラムフェノコール、カナマイシン、メトトレキセート、G418(ゲネチシン)、ゼオシン等が挙げられる。対応するゲノム機能に栄養要求性突然変異をもつ入手可能な酵母株で酵母宿主細胞に必須細胞栄養素を合成させる遺伝子機能を使用する。一般的な酵母選択マーカーはロイシン(LEU2)、トリプトファン(TRP1及びTRP2)、ウラシル(URA3,URA5 URA6)、ヒスチジン(HIS3)、リジン(LYS2)、アデニン(ADE1又はADE2)等を合成するための遺伝子機能を提供する。他の酵母選択マーカーとしては、亜ヒ酸塩の存在下で増殖させる酵母細胞に亜ヒ酸塩耐性を付与するS.cerevisiaeに由来するARR3遺伝子が挙げられる。(Bobrowiczら,Yeast,13:819−828(1997);Wysockiら,J.Biol.Chem.272:30061−066(1997))。多数の適切な組込み部位としては米国出願公開第20070072262号に記載されているものが挙げられ、Saccharomyces cerevisiae及び他の酵母又は真菌類に公知の遺伝子座のホモログが挙げられる。]
[0109] 従って、本発明の発現ベクターは培養に存在する細胞集団内でベクターを保有する宿主細胞を同定及び維持するために有用な選択マーカーをコードすることができる。状況によっては、発現ベクターのコピー数を増幅するために選択マーカーを使用することもできる。過剰発現遺伝子産物又は異種シャペロン蛋白質をコードするRNAを産生するように本発明の発現ベクターから転写誘導後、遺伝子産物又は異種シャペロン蛋白質を産生するように細胞内因子によりRNAを翻訳する。]
[0110] 酵母及び他の真核生物では、mRNAの5’キャップとリボソームが結合し、ポリペプチド合成を開始できる最初のAUG開始コドンまでmRNAに沿ってリボソームが移動することにより、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳が開始する。原核発現系では必要な場合もあるが、酵母及び哺乳動物細胞における発現には一般にリボソーム結合部位と開始コドンの間に特定数のヌクレオチドが不要である。他方、酵母又は哺乳動物宿主細胞における発現では、mRNAの最初のAUGコドンが目的の翻訳開始コドンであることが好ましい。]
[0111] 更に、酵母宿主細胞で発現を実施する場合には、長い非翻訳リーダー配列(例えば50〜100ヌクレオチドよりも長い配列)が存在すると、mRNAの翻訳が低下する可能性がある。酵母mRNAリーダー配列は平均約50ヌクレオチド長であり、アデニンリッチであり、二次構造が殆どなく、大抵は最初のAUG開始コドンを使用する。これらの特徴をもたないリーダー配列は蛋白質翻訳効率を低下させる可能性があるので、酵母宿主細胞における過剰発現遺伝子産物又はシャペロン蛋白質の発現には酵母リーダー配列を使用することが好ましい。多数の酵母リーダー配列が知られており、例えばCiganら(Gene 59:1−18(1987))を参照することにより当業者に入手可能である。]
[0112] プロモーター、リボソーム結合部位及び開始コドンの位置以外に、得られる発現レベルに影響を与える可能性のある因子としては、複製可能な発現ベクターのコピー数が挙げられる。ベクターのコピー数はベクターの複製起点と関連するシス作用性制御エレメントが存在する場合にはこのようなエレメントにより一般に決定される。例えば、セントロメアに近接するプロモーターから転写を誘導することにより、調節されるセントロメアをコードする酵母エピソームベクターのコピー数の増加を達成することができる。更に、酵母ベクターで酵母FLP機能をコードさせてもベクターのコピー数を増加することができる。]
[0113] 当業者は入手可能なベクターに由来するDNAフラグメントを結合するか、このような調節エレメントをコードする核酸分子を合成するか、又は新規調節エレメントを本発明のベクターにクローン化することにより、上記配列を含む発現ベクターを容易に設計及び作製することもできる。発現ベクターの作製方法は周知である。過剰発現DNA法は遺伝子工学に関する無数の標準実験室マニュアルのいずれかに記載されている。]
[0114] 本発明の発現ベクターは異種シャペロン蛋白質コーディング領域をプロモーター及び遺伝子発現を制御するために使用される他の配列エレメントと正しい向きでライゲーションすることにより作製することができる。本発明の発現ベクターの構築後、過剰発現遺伝子産物と異種シャペロン蛋白質を発現させることが可能な宿主細胞にこのようなベクターを形質転換する。酵母及び他の下等真核細胞を発現ベクターで形質転換する方法は当業者に周知であり、容易に利用可能である。例えば、酢酸リチウム法、スフェロプラスト法、エクトロポレーション及び同等手順等の数種の手順のいずれかにより発現ベクターを酵母細胞に形質転換することができる。]
[0115] 酵母複製可能な発現ベクターと併用することができる酵母宿主細胞としては、分泌可能な任意野生型又は突然変異体酵母株が挙げられる。このような株はSaccharomyces cerevisiae、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces lactis、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombe、Yarrowia lipolytica、及び近縁酵母種に由来することができる。一般に、有用な突然変異体酵母株としては、選択マーカーをコードする酵母ベクターと併用することができる遺伝子欠損をもつ株が挙げられる。多種の酵母株がYeast Genetics Stock Center(Dormer Laboratory,University of California,Berkeley,Calif.94720)、the American Type Culture Collection(12301 Parklawn Drive,Rockville,Md.20852,以下ATCC)、the National Collection of Yeast Cultures(Food Research Institute,Colney Lane,Norwich NR47UA,UK)及びthe Centraalbureau voor Schimmelcultures(Yeast Division,Julianalaan 67a,2628 BC Delft,Netherlands)から入手可能である。]
[0116] 一般に、酵母等の下等真核生物は経済的に培養することができ、収率が高く、適切に改変すると、適切なグリコシル化が可能であるため、糖蛋白質の発現に有用である。酵母は特に迅速形質転換、試験蛋白質局在ストラテジー及び平易な遺伝子ノックアウト技術を可能にする確立された遺伝子工学材料である。適切なベクターは必要に応じてプロモーター(3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の糖分解酵素を含む)、複製起点、終結配列等の発現制御配列をもつ。]
[0117] Kluyveromyces lactis、Pichia pastoris、Pichia methanolica及びHansenula polymorpha等の各種酵母は高い細胞密度まで増殖し、大量の組換え蛋白質を分泌することができるので、細胞培養に有用である。同様に、本発明の糖蛋白質を工業的規模で生産するためにAspergillus niger、Fusarium種、Neurospora crassa等の糸状菌も使用することができる。]
[0118] グリコシル化パターンがヒト様であるか又はヒト化された糖蛋白質を発現するように下等真核生物、特に酵母を遺伝子改変することができる。これは、Gerngrossら,US20040018590に記載されているように選択された内在性グリコシル化酵素を排除すること及び/又は外来酵素を供給することにより達成できる。例えば、欠損させないと糖蛋白質のN−グリカンにマンノース残基を付加する1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠損させるように宿主細胞を選択又は構築することができる。]
[0119] 一実施形態において、宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、α1,2−マンノシダーゼ活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したα1,2−マンノシダーゼ触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、Man5GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質(例えばMan5GlcNAc2グリコフォームを主体とする組換え糖蛋白質組成物)が産生される。例えば、米国特許第7,029,872号と米国特許出願公開第2004/0018590号及び2005/0170452号はMan5GlcNAc2グリコフォームを含む糖蛋白質を産生することが可能な下等真核宿主細胞を開示している。]
[0120] 別の実施形態において、前記宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、GlcNAcトランスフェラーゼI活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したGlcNAcトランスフェラーゼI(GnT I)触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、GlcNAcMan5GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質(例えばGlcNAcMan5GlcNAc2グリコフォームを主体とする組換え糖蛋白質組成物)が産生される。米国特許第7,029,872号と米国特許出願公開第2004/0018590号及び2005/0170452号はGlcNAcMan5GlcNAc2グリコフォームを含む糖蛋白質を産生することが可能な下等真核宿主細胞を開示している。上記細胞で産生された糖蛋白質をヘキソサミニダーゼでインビトロ処理し、Man5GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質を作製することができる。]
[0121] 別の実施形態において、前記宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、マンノシダーゼII活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したマンノシダーゼII触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、GlcNAcMan3GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質(例えばGlcNAcMan3GlcNAc2グリコフォームを主体とする組換え糖蛋白質組成物)が産生される。米国特許第7,029,872号及び米国特許出願公開第2004/0230042号はマンノシダーゼII酵素を発現し、GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームを主体とする糖蛋白質を産生することが可能な下等真核宿主細胞を開示している。上記細胞で産生された糖蛋白質をヘキソサミニダーゼでインビトロ処理し、Man3GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質を作製することができる。]
[0122] 別の実施形態において、前記宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、GlcNAcトランスフェラーゼII活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したGlcNAcトランスフェラーゼII(GnT II)触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質(例えばGlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームを主体とする組換え糖蛋白質組成物)が産生される。米国特許第7,029,872号と米国特許出願公開第2004/0018590号及び2005/0170452号はGlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームを含む糖蛋白質を産生することが可能な下等真核宿主細胞を開示している。上記細胞で産生された糖蛋白質をヘキソサミニダーゼでインビトロ処理し、Man3GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質を作製することができる。]
[0123] 別の実施形態において、前記宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、GalGlcNAc2Man3GlcNAc2もしくはGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォーム又はその混合物を含む組換え糖蛋白質(例えばGalGlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームもしくはGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォーム又はその混合物を主体とする組換え糖蛋白質組成物)が産生される。米国特許第7,029,872号と米国特許出願公開第2006/0040353号はGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームを含む糖蛋白質を産生することが可能な下等真核宿主細胞を開示している。上記細胞で産生された糖蛋白質をガラクトシダーゼでインビトロ処理し、GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質(例えばGlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームを主体とする組換え糖蛋白質組成物)を作製することができる。]
[0124] 別の実施形態において、前記宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、シアリルトランスフェラーゼ活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したシアリルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、NANA2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームもしくはNANAGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォーム又はその混合物を主体とする組換え糖蛋白質が産生される。酵母や糸状菌等の下等真核宿主細胞では、更にN−グリカンに転移するためにCMP−シアル酸を提供するための手段を宿主細胞に加えると有用である。米国特許出願公開第2005/0260729号はCMP−シアル酸合成経路をもつように下等真核生物を遺伝子操作するための方法を開示しており、米国特許出願公開第2006/0286637号はシアル酸を付加した糖蛋白質を産生するように下等真核生物を遺伝子操作するための方法を開示している。上記細胞で産生された糖蛋白質をノイラミニダーゼでインビトロ処理し、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォームもしくはGalGlcNAc2Man3GlcNAc2グリコフォーム又はその混合物を主体とする組換え糖蛋白質を作製することができる。]
[0125] 上記宿主細胞の任意1種は更に、米国特許出願公開第2004/074458号及び2007/0037248号に開示されているような分岐型(GnT III)及び/又は複数側鎖(GnT IV、V、VI及びIX)N−グリカン構造をもつ糖蛋白質を産生するようにGnT III、GnT IV、GnT V、GnT VI及びGnT IXから構成される群から選択される1種以上のGlcNAcトランスフェラーゼを含むことができる。]
[0126] 他の実施形態において、GlcNAcMan5GlcNAc2N−グリカンを主体とする糖蛋白質を産生する宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、GalGlcNAcMan5GlcNAc2グリコフォームを主体とする組換え糖蛋白質が産生される。]
[0127] 別の実施形態において、GalGlcNAcMan5GlcNAc2N−グリカンを主体とする糖蛋白質を産生する前記宿主細胞は更に、通常では触媒ドメインと結合しておらず、シアリルトランスフェラーゼ活性を宿主細胞のER又はゴルジ装置に標的指向化するように選択された細胞内標的指向化シグナルペプチドと融合したシアリルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含む。組換え糖蛋白質が宿主細胞のER又はゴルジ装置を通過すると、NANAGalGlcNAcMan5GlcNAc2グリコフォームを含む組換え糖蛋白質が産生される。]
[0128] 上記各種宿主細胞は更に、UDP−GlcNAcトランスポーター(例えばKluyveromyces lactis及びMas musculus UDP−GlcNAcトランスポーター)、UDP−ガラクトーストランスポーター(例えばDrosophila melanogaster UDP−ガラクトーストランスポーター)、及びCMP−シアル酸トランスポーター(例えばヒトシアル酸トランスポーター)等の1種以上の糖トランスポーターを含む。酵母や糸状菌等の下等真核宿主細胞は上記トランスポーターをもたないので、上記トランスポーターを含むように酵母や糸状菌等の下等真核宿主細胞を遺伝子操作することが好ましい。]
[0129] 上記宿主細胞の他の実施形態では、β−マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子(BMT2)(米国特許出願公開第2006/0211085号参照)を欠損又は破壊することによりα−マンノシダーゼ耐性N−グリカンをもつ糖蛋白質を排除し、ホスホマンノシルトランスフェラーゼ遺伝子PNO1及びMNN4B(例えば米国特許第7,198,921号及び7,259,007号参照)の一方又は両方を欠損又は破壊することによりホスホマンノース残基をもつ糖蛋白質を排除するように宿主細胞を更に遺伝子操作する。上記宿主細胞の更に他の実施形態では、蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼの1個以上(Dol−P−Man:蛋白質(Ser/Thr)マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子)(PMT)(米国特許第5,714,377号参照)を欠損又は破壊することにより糖蛋白質のO−グリコシル化を排除するように宿主細胞を更に遺伝子改変するか、又は国際出願公開第WO2007061631号に開示されているようにPmt−1、Pmti−2及びPmti−3等の阻害剤の存在下で増殖させるか、又はその両方を実施する。]
[0130] 従って、糖蛋白質を産生するように遺伝子改変された宿主細胞も提供し、主体となるN−グリカンとしては限定されないが、Man8GlcNAc2、Man7GlcNAc2、Man6GlcNAc2、Man5GlcNAc2、GlcNAcMan5GlcNAc2、GalGlcNAcMan5GlcNAc2、NANAGalGlcNAcMan5GlcNAc2、Man3GlcNAc2、GlcNAc(1−4)Man3GlcNAc2、Gal(1−4)GlcNAc(1−4)Man3GlcNAc2、NANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)Man3GlcNAc2が挙げられる。更に上記N−グリカンの特定混合物を含有する糖蛋白質を産生する宿主細胞も含まれる。]
[0131] 以下の実施例では、Pichia pastoris種の宿主細胞で異種ヒト蛋白質を発現させる。これらの実施例は本発明の特定実施形態について本発明を実証するものであり、如何なる点でも限定的であると解釈すべきではない。本明細書の開示と実施例を通読した当業者は記載する方法及び材料に加え、本発明の実施の範囲内で可能な多数の変形、変更及び改良に想到しよう。]
[0132] 本実施例は、内在性PDI1をコードする遺伝子を不活性化し、ヒトPDIをコードする発現カセットで置換した宿主細胞を使用することによりPichia pastorisにおける異種ヒト蛋白質の発現が増加したことを示す。本実施例は更にこれらの宿主細胞がO−グリコシル化の低下した組換え抗体を産生したことを示す。]
[0133] ヒトPDI蛋白質をコードする発現カセットと、Pichia pastoris PDI1をコードする遺伝子を、ヒトPDIをコードする核酸分子で置換するためにプラスミドベクターをPichia pastoris PDI1遺伝子座に標的指向化するための核酸分子を含む発現/組込みプラスミドベクターpGLY642の構築を以下のように実施し、図8に示す。プライマーとしてhPDI/UP1:5’−AGCGCTGACGCCCCCGAGGAGGAGGACCAC−3’(配列番号1)及びhPDI/LP−PacI:5’−CCTTAATTAATTACAGTTCATCATGCACAGCTTTCTGATCAT−3’(配列番号2)と、Pfu turboDNAポリメラーゼ(Stratagene,La Jolla,CA)と、ヒト肝cDNA(BD Bioscience,San Jose,CA)を使用してヒトPDIをコードするcDNAをPCR増幅した。PCR条件は95℃で2分間を1サイクル、95℃で20秒間、58℃で30秒間、及び72℃で1.5分間を25サイクル後、72℃で10分間を1サイクルとした。得られたPCR産物をプラスミドベクターpCR2.1にクローン化し、プラスミドベクターpGLY618を作製した。ヒトPDIのヌクレオチド配列とアミノ酸配列(夫々配列番号39及び40)を表11に示す。] 図8
[0134] Pichia pastorisPDI1のヌクレオチド配列とアミノ酸配列(夫々配列番号41及び42)を表11に示す。Pichia pastorisゲノムDNAに由来する領域のPCR増幅によりPichia pastoris PDI1 5’及び3’領域を含む核酸分子の単離を行った。プライマーとしてPB248:5’−ATGAATTCAGGCCATATCGGCCATTGTTTACTGTGCGCCCACAGTAG−3’(配列番号3);PB249:5’−ATGTTTAAACGTGAGGATTACTGGTGATGAAAGAC−3’(配列番号4)を使用して5’領域を増幅した。プライマーとしてPB250:5’−AGACTAGTCTATTTGGAGACATTGACGGATCCAC−3’(配列番号5);PB251:5’−ATCTCGAGAGGCCATGCAGGCCAACCACAAGATGAATCAAATTTTG−3’(配列番号6)を使用して3’領域を増幅した。Pichia pastoris株NRRL−Y11430ゲノムDNAをPCR増幅に使用した。PCR条件は95℃で2分間を1サイクル、95℃で30秒間、55℃で30秒間、及び72℃で2.5分間を25サイクル後、72℃で10分間を1サイクルとした。得られたPCRフラグメントPpPDI1(5’)及びPpPDI1(3’)をプラスミドベクターpCR2.1に別々にクローン化し、夫々プラスミドベクターpGLY620及びpGLY617を作製した。pGLY678を構築するために、プラスミドベクターをPichia pastorisARG3遺伝子座に標的指向化する組込みプラスミドベクターpGLY24のDNAフラグメントPpARG3−5’及びPpARG−3’を、プラスミドベクターpGLY678をPDI1遺伝子座に標的指向化してPDI1遺伝子座の発現を破壊するDNAフラグメントPpPDI(5’)及びPpPDI(3’)で夫々置換した。]
[0135] 次にヒトPDIをコードする核酸分子をプラスミドベクターpGLY678にクローン化し、ヒトPDIをコードする核酸分子をPichia pastoris GAPDHプロモーター(PpGAPDH)の制御下においたプラスミドベクターpGLY642を作製した。5’末端NotI制限酵素部位と平滑3’末端をもつSaccharomyces cerevisiae α接合因子プレシグナルペプチド(ScαMFプレシグナルペプチド)(配列番号28)をコードする核酸分子(配列番号27)と、AfeIとPacIでプラスミドベクターpGLY618から遊離させたヒトPDIをコードする核酸分子を含む発現カセットをライゲーションし、平滑5’末端と3’末端PacI部位をもつ核酸分子を作製し、NotIとPacIで消化したプラスミドベクターpGLY678に挿入することにより、発現/組込みプラスミドベクターpGLY642を構築した。得られた組込み/発現プラスミドベクターpGLY642は、Pichia pastorisプロモーターと機能的に連結されたヒトPDI/ScαMFプレシグナルペプチド融合蛋白質をコードする発現カセットと、PDI1遺伝子座の破壊とPDI1遺伝子座への発現カセットの組込みのためにプラスミドベクターをPichia pastoris PDI1遺伝子座に標的指向化するための核酸分子配列を含む。図8はプラスミドベクターpGLY642の構築を示す。ScαMFプレシグナルペプチドのヌクレオチド配列とアミノ酸配列を夫々配列番号27及び28に示す。] 図8
[0136] ヒトERO1α蛋白質をコードする発現/組込みベクターpGLY2232の構築を以下のように実施し、図9に示す。ヒトERO1α蛋白質をコードする核酸分子をGeneArt AG(Regensburg,Germany)により合成し、これを使用してプラスミドベクターpGLY2224を構築した。ヒトERO1α蛋白質のヌクレオチド配列とアミノ酸配列(夫々配列番号43及び44)を表11に示す。制限酵素AfeI及びFseIを使用してヒトERO1α蛋白質をコードする核酸分子をプラスミドベクターから遊離させた後、上記のように5’NotI末端と3’平滑末端をもつScαMPプレシグナルペプチドをコードする核酸分子とライゲーションし、NotIとFseIで消化したプラスミドベクターpGLY2228に挿入した。プラスミドベクターpGLY2228はPichia pastoris PRB1遺伝子の5’及び3’領域(夫々PpPRB1−5’及びPpPRB1−3’領域)を含む核酸分子も含んでいた。得られたプラスミドベクターpGLY2230をBglIIとNotIで消化後、BglIIとNotIで消化したプラスミドベクターpGLY2187から得られたPichia pastorisPDI1プロモーター(PpPDIプロモーター)を含む核酸分子とライゲーションした。PpPDIプロモーターのヌクレオチド配列は5’−AACACGAACACTGTAAATAGAATAAAAGAAAACTTGGATAGTAGAACTTCAATGTAGTGTTTCTATTGTCTTACGCGGCTCTTTAGATTGCAATCCCCAGAATGGAATCGTCCATCTTTCTCAACCCACTCAAAGATAATCTACCAGACATACCTACGCCCTCCATCCCAGCACCACGTCGCGATCACCCCTAAAACTTCAATAATTGAACACGTACTGATTTCCAAACCTTCTTCTTCTTCCTATCTATAAGA−3’(配列番号59)である。得られたプラスミドベクターpGLY2232はPichia pastoris PDI1プロモーターの制御下にヒトERO1α融合蛋白質をコードする発現カセットを含み、PRB1遺伝子座の破壊とPRB1遺伝子座への発現カセットの組込みのためにゲノムのPRB1遺伝子座にプラスミドベクターを標的指向化するためのPichia pastoris PRB1遺伝子の5’及び3’領域を含む発現/組込みベクターである。図9はプラスミドベクターpGLY2232の構築を示す。] 図9
[0137] ヒトGRP94蛋白質をコードする発現/組込みベクターpGLY2233の構築を以下のように実施し、図10に示す。プライマーとしてhGRP94/UP1:5’−AGCGCTGACGATGAAGTTGATGTGGATGGTACAGTAG−3’(配列番号15);及びhGRP94/LP1:5’−GGCCGGCCTT ACAAT TCATC ATGTT CAGCT GTAGATTC−3’(配列番号16)を使用してヒトGRP94をヒト肝cDNA(BD Bioscience)からPCR増幅した。PCR条件は95℃で2分間を1サイクル、95℃で20秒間、55℃で20秒間、及び72℃て2.5分間を25サイクル後、72℃で10分間を1サイクルとした。PCR産物をプラスミドベクターpCR2.1にクローン化し、プラスミドベクターpGLY2216を作製した。ヒトGRP94のヌクレオチド配列とアミノ酸配列(夫々配列番号45及び46)を表11に示す。] 図10
[0138] プラスミドベクターpGLY2216からヒトGRP94をコードする核酸分子をAfeIとFseIで遊離させた。上記のようにNotI末端と平滑末端をもつScαMPプレシグナルペプチドをコードする核酸分子に前記核酸分子をライゲーションし、Pichia pastoris PEP4 5’及び3’領域(夫々PpPEP4−5’及びPpPEP4−3’領域)を含む核酸分子をもつプラスミドベクターpGLY2231をNotIとFseIで消化後に挿入し、プラスミドベクターpGLY2229を作製した。プラスミドベクターpGLY2229をBglIIとNotIで消化し、プラスミドベクターpGLY2187からPpPDI1プロモーターを含むDNAフラグメントをBglIIとNotIで切出し、このDNAフラグメントをpGLY2229にライゲーションし、プラスミドベクターpGLY2233を作製した。プラスミドベクターpGLY2233はPichia pastoris PDIプロモーターの制御下にヒトGRP94融合蛋白質をコードし、PEP4遺伝子座の破壊とPEP4遺伝子座への発現カセットの組込みのためにゲノムのPEP4遺伝子座にプラスミドベクターを標的指向化するためのPichia pastoris PEP4遺伝子の5’及び3’領域を含む。図10はプラスミドベクターpGLY2233の構築を示す。] 図10
[0139] プラスミドベクターpGLY1162、pGLY1896及びpGFI207tの構築を以下のように実施した。全Trichoderma reesei α−1,2−マンノシダーゼ発現プラスミドベクターはS.cerevisiae αMATプレシグナルペプチドに融合したT.reesei α−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメイン(国際出願公開第WO2007061631号参照)をコードし、発現をPichia pastoris GAPプロモーターの制御下におき、プラスミドベクターの組込みをPichia pastoris PRO1遺伝子座に標的指向化し、選択にPichia pastoris URA5遺伝子を使用するpGFI165に由来するものとした。プラスミドベクターpGFI165の地図を図11に示す。] 図11
[0140] pGFI165のGAPプロモーターをPichia pastoris AOX1(PpAOX1)プロモーターで置換することによりプラスミドベクターpGLY1162を作製した。これはpGLY2028からEcoRI(平滑化)−BglIIフラグメントとしてPpAOX1プロモーターを単離し、NotI(平滑化)とBglIIで消化したpGFI165に挿入することにより実施した。プラスミドベクターの組込みはPichia pastoris PRO1遺伝子座を標的とし、選択にPichia pastoris URA5遺伝子を使用する。プラスミドベクターpGLY1162の地図を図12に示す。] 図12
[0141] プラスミドベクターpGLY1896はS.cerevisiae MNN2膜挿入リーダーペプチド融合蛋白質(Choiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5022(2003)参照)に融合したマウスα−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメインをコードする発現カセットをプラスミドベクターpGFI165(図12)に挿入したものである。これはXhoI(末端平滑化)とPmeIで消化したpGLY1433からGAPp−ScMNN2−マウスMNSI発現カセットを単離し、PmeIで消化したpGFI165にフラグメントを挿入することにより実施した。プラスミドベクターの組込みはPichia pastoris PRO1遺伝子座を標的とし、選択にPichia pastoris URA5遺伝子を使用する。プラスミドベクターpGLY1896の地図を図11に示す。] 図11 図12
[0142] プラスミドベクターpGFI207tは亜ヒ酸塩耐性を付与するようにURA5選択マーカーをS.cerevisiae ARR3(ScARR3)遺伝子で置換した以外はpGLY1896と同様である。これはAscI(AscI末端平滑化)とBglIIで消化したpGFI166からScARR3遺伝子を単離し、SpeI(SpeI末端平滑)とBglIIで消化したpGLY1896に挿入することにより実施した。プラスミドベクターの組込みはPichia pastoris PRO1遺伝子座を標的とし、選択にSaccharomyces cerevisiae ARR3遺伝子を使用する。プラスミドベクターpGFI207tの地図を図11に示す。] 図11
[0143] 抗DKK1抗体発現/組込みプラスミドベクターpGLY2260及びpGLY2261の構築を以下のように実施した。抗DKK1抗体はWntシグナル伝達経路に関与するリガンドであるDickkopf蛋白質1を認識する抗体である。抗DKK1抗体をコードする発現/組込みプラスミドベクターpGLY2260及びpGLY2261を作製するために、各々α−アミラーゼ(Aspergillus niger由来)シグナルペプチドをコードする核酸分子とインフレームで連結された重鎖(HC;VH+IgG2m4を含む融合蛋白質)及び軽鎖(LC;VL+Lλ定常領域を含む融合蛋白質)融合蛋白質をコードするコドン最適化核酸分子をGeneArt AGにより合成した。α−アミラーゼシグナルペプチドのヌクレオチド配列とアミノ酸配列を配列番号33及び34に示す。HCのヌクレオチド配列を配列番号51に示し、アミノ酸配列を配列番号52に示す。LCのヌクレオチド配列を配列番号53に示し、アミノ酸配列を配列番号54に示す。IgG2m4アイソタイプは米国出願公開第2007/0148167号及び米国出願公開第2006/0228349号に開示されている。ユニークな5’−EcoRI及び3’−FseI部位を使用してHC及びLC融合蛋白質をコードする核酸分子を別々に発現プラスミドベクターpGLY1508にクローン化し、夫々プラスミドベクターpGLY1278及びpGLY1274を形成した。これらのプラスミドベクターはゼオシン耐性マーカー及びTRP2組込み部位と、HC及びLC融合蛋白質をコードする核酸分子と機能的に連結されたPichia pastoris AOX1プロモーターを含んでいた。LC融合蛋白質発現カセットをBglIIとBamHIでpGLY1274から切出し、BglIIで消化したpGLY1278にクローン化し、HC及びLC融合蛋白質をコードし、TRP2遺伝子座への発現カセットの組込みのために発現カセットをTRP2遺伝子座に標的指向化するプラスミドベクターpGLY2260を作製した。プラスミドベクターpGLY2261はプラスミドベクターpGLY2260に付加的なLCを含む(図13)。] 図13
[0144] 抗ADDL抗体発現/組込みプラスミドベクターpGLY2260の構築を以下のように実施した。抗ADDL抗体はAβ由来拡散性リガンドを認識する抗体である(例えば米国出願公開第20070081998号参照)。発現/組込みプラスミドベクターpGLY2012を作製するために、各々Saccharomyces cerevisiaeインベルターゼシグナルペプチドをコードする核酸分子とインフレームで連結された重鎖(HC;VH+IgG2m4を含む)及び軽鎖(LC;VL+Lλ定常領域を含む融合蛋白質)融合蛋白質をコードするコドン最適化核酸分子をGeneArt AGにより合成した。ユニークな5’−EcoRI及び3’−FseI部位を使用してHC及びLC融合蛋白質をコードする核酸分子を別々に発現/組込みプラスミドベクターpGLY1508及びpGLY1261にクローン化し、ゼオシン耐性マーカー及びTRP2組込み部位と、HC及びLC融合蛋白質をコードする核酸分子と機能的に連結されたPichia pastoris AOX1プロモーターを含むpGLY2011及びpGLY2010を夫々形成した。HC発現カセットをBglIIとNotIでpGLY2011から切出し、BamHIとNotIで消化したpGLY2010にクローン化し、HC及びLC融合蛋白質をコードし、TRP2遺伝子座への発現カセットの組込みのために発現カセットをTRP2遺伝子座に標的指向化するpGLY2012を作製した(図14)。] 図14
[0145] 上記発現/組込みベクターによる酵母形質転換を以下のように実施した。Pichia pastoris株をYPD培地(酵母エキス(1%),ペプトン(2%),デキストロース(2%))50mL中でODが約0.2〜6.0になるまで一晩増殖させた。氷上で30分間温置後、2500〜3000rpmで5分間遠心することにより細胞をペレット化した。培地を捨て、細胞を氷冷滅菌1Mソルビトールで3回洗浄後、氷冷滅菌1Mソルビトール0.5mlに再懸濁した。直鎖化DNA10μL(5〜20μg)と細胞懸濁液100μLをエレクトロポレーションキュベットに加え、氷上で5分間温置した。プリセットPichia pastorisプロトコール(2kV,25μF,200Ω)に従ってBio−Rad GenePulser Xcellでエレクトロポレーションを実施し、直後にYPDS回収培地(YPD培地+1Mソルビトール)1mLを加えた。形質転換細胞を室温(24℃)で4時間〜一晩回収後、細胞を選択培地に撒いた。]
[0146] 細胞株の作製を以下のように実施し、図3に示す。従来記載されている方法(例えばNett and Gerngross,Yeast 20 1279(2003),Choiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5022(2003);Hamiltonら,Science 301:1244(2003)参照)を使用して株yGLY24−1(ura5△::MET1 och1△::lacZ bmt2△::lacZ/KlMNN2−2/mnn4L1△::lacZ/MmSLC35A3 pno1△mnn4△::lacZ met16△::lacZ)を構築した。BMT2遺伝子はMilleら,J.Biol.Chem.283:9724−9736(2008)及び米国出願公開第20060211085号に開示されている。PNO1遺伝子は米国特許第7,198,921号に開示されており、mnn4L1遺伝子(別称mnn4b)は米国特許第7,259,007号に開示されている。mnn4とはmnn4L2又はmnn4を意味する。遺伝子型において、KlMNN2−2はKluveromyces lactis GlcNAcトランスポーターであり、MmSLC35A3はMus musculus GlcNAcトランスポーターである。URA5欠損によりyGLY24−1株をウラシル栄養要求性(米国出願公開第2004/0229306号参照)にし、これを使用して以下のヒト化シャペロン株を構築した。本明細書の実施例では各種発現カセットをPichia pastorisゲノムの特定遺伝子座に組込んだが、当然のことながら、本発明の操作は組込みに使用する遺伝子座から独立している。本明細書に開示する遺伝子座以外の遺伝子座も発現カセットの組込みに使用することができる。適切な組込み部位としては、米国出願公開第20070072262号に列挙されている部位が挙げられ、Saccharomyces cerevisiae及び他の酵母又は真菌類に公知の遺伝子座のホモログを含む。]
[0147] 対照株yGLY645(PpPDI1)を構築した。株yGLY645は天然Pichia pastoris PDI1遺伝子座を無傷のままにしながら、各々PpGAPDHプロモーターの制御下で構成的に発現されるTrichoderma Reeseiマンノシダーゼ1(TrMNS1)とマウスマンノシダーゼIA(MuMNS1A)の両者を発現する。プラスミドベクターをPichiaゲノム内のプロリン1(PRO1)遺伝子座に標的指向化するプラスミドベクターpGLY1896でyGLY24−1を形質転換することにより株yGLY24−1から株yGLY645を作製した。プラスミドベクターpGLY1896は各々PpGAPDHプロモーターの制御下で構成的に発現されるTrichoderma Reeseiマンノシダーゼ1(TrMNS1)とマウスマンノシダーゼIA(FB53,MuMNS1A)をコードする発現カセットを含む。]
[0148] 内在性Pichia pastorisPDI1遺伝子の不在下にPichia pastoris細胞で発現されるヒトPDI1の有効性を試験するために株yGLY702及びyGLY704を作製した。株yGLY702及びyGLY704(hPDI)を以下のように構築した。構成的PpGAPDHプロモーターの制御下でヒトPDIをコードする発現カセットを含むプラスミドベクターpGLY642でyGLY24−1を形質転換することにより株yGLY702を作製した。プラスミドベクターpGLY642は更にPichia pastoris URA5をコードする発現カセットを含むため、株yGLY702はウラシル原栄養性であった。5−FOAプレートでyGLY702を対抗選択することによりURA5発現カセットを除去し、Pichia pastoris PDI1遺伝子をヒトPDI遺伝子で安定的に置換し、株がウラシル栄養要求性である株yGLY704を作製した。]
[0149] PpPDI1 ORFのみに特異的なプライマーとしてPpPDI/UPi−1,5’−GGTGAGGTTGAGGTCCCAAGTGACTATCAAGGTC−3’(配列番号7);PpPDI/LPi−1,5’−GACCTTGATAGTCACTTGGGACCTCAACCTCACC−3’(配列番号8);PpPDI/UPi−2,5’CGCCAATGATGAGGATGCCTCTTCAAAGGTTGTG−3’(配列番号9);及びPpPDI/LPi−2,5’−CACAACCTTTGAAGAGGCATCCTCATCATTGGCG−3’(配列番号10)を使用するコロニーPCRにより、プラスミドベクターpGLY642を使用したヒトPDIによるPichia pastoris PDI1の置換を確認した。即ち、PCR産物の不在はPpPDI1のノックアウトを意味する。PCR条件は95℃で2分間を1サイクル、95℃で20秒間、58℃で20秒間、及び72℃で1分間を25サイクル後、72℃で10分間を1サイクルとした。]
[0150] PCRプライマーとしてPpPDI−5’/UP,5’−GGCGATTGCATTCGCGACTGTATC−3’(配列番号11);及びhPDI−3’/LP,5’−CCTAGAGAGCGGTGGCCAAGATG−3’(配列番号12)を使用してPpPDI1遺伝子座におけるpGLY642のダブルクロスオーバーを確認するために更にPCRを使用した。PpPDI−5’/UPはpGY642のPpPDI1(5’)に不在のPpPDI1の上流領域を増幅し、hPDI−3’/LPはpGLY642におけるヒトPDI ORFを増幅する。PCR条件は95℃で2分間を1サイクル、95℃で20秒間、50℃で30秒間、及び72℃で2.5分間を25サイクル後、72℃で10分間を1サイクルとした。]
[0151] ノックアウト(即ちダブルクロスオーバーイベント)又は「ロールイン」(即ちゲノムへのプラスミドベクターの1カ所の組込み)としてのプラスミドベクターの組込み効率は宿主染色体DNA上のベクターと対応する遺伝子の間の相同領域の個数と長さ、選択マーカー、該当遺伝子の役割、及びノックイン遺伝子が内在性機能を相補する能力等の多数の因子に依存し得る。本発明者らは、pGLY642がダブルクロスオーバーとして組込まれると内在性PpPDI遺伝子がヒトPpPDIで置換され、pGLY642プラスミドベクターが1カ所組込みとして組込まれると、内在性PpPDI1遺伝子とヒトPpPDI遺伝子が併存することを見出した。これらのイベントを区別するために、本発明者らは本明細書に記載する配列番号11〜14のPCRプライマーを利用した。pGLY642プラスミドベクターの組込み後にPpPDI遺伝子が維持されているならば、PpPDI−5’/UP及びhPDI−3’/LPは内部PpPDIコーディング配列と反応し、増幅産物と対応するバンドが得られるであろう。ノックアウトないしダブルクロスオーバーの場合には、これらのプライマーは増幅産物を生じず、対応するバンドも見えないであろう。]
[0152] プライマーとしてPpPDI1をコードするPpPDI/UPi(配列番号7)及びPpPDI/LPi−1(配列番号8)と、ヒトPDIをコードするhPDI/UP,5’−GTGGCCACACCAGGGGGCATGGAAC−3’(配列番号13);及びhPDI−3’/LP,5’−CCTAGAGAGCGGTGGCCAAGATG−3’(配列番号14)を使用してpGLY642のロールインを確認した。PCR条件は、PpPDI1では95℃で2分間を1サイクル、95℃で20秒間、58℃で20秒間、及び72℃で1分間を25サイクル後、72℃で10分間を1サイクルとし,ヒトPDIでは95℃で2分間を1サイクル、95℃で20秒間、50℃で30秒間、及び72℃で2.5分間を25サイクル後、72℃で10分間を1サイクルとした。]
[0153] 株yGLY714はPichia pastorisPDI1遺伝子座を含むと同時にヒトPDIを発現し、シングルクロスオーバーイベントによる組込みの結果として得られた株である。Pichia pastoris GAPDHプロモーターの構成的調節制御下にヒトPDI遺伝子を含むプラスミドベクターpGLY642をyGLY24−1のPpPDI 5’UTR領域に組込むことにより株yGLY24−1から株yGLY714を作製した。このベクターの組込みはPichia pastoris PDI1遺伝子座の発現を妨げない。従って、yGLY714において、ヒトPDIはPichia pastoris内在性PDI1の存在下で構成的に発現される。]
权利要求:

請求項1
シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能が破壊又は欠損させられ、ならびに内在性シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子が宿主細胞で発現させられる下等真核宿主細胞。
請求項2
シャペロン蛋白質が蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)である、請求項1の下等真核宿主細胞。
請求項3
哺乳動物ホモログがヒトPDIである、請求項1の下等真核宿主細胞。
請求項4
宿主細胞が更に組換え蛋白質をコードする核酸分子を含む、請求項1の下等真核宿主細胞。
請求項5
蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能を低下、破壊又は欠損させられた、請求項1の下等真核宿主細胞。
請求項6
宿主細胞が更に内在性又は異種Ca2+ATPアーゼをコードする核酸分子を含む、請求項1の下等真核宿主細胞。
請求項7
宿主細胞が更にERp57蛋白質をコードする核酸分子と、カルレティキュリン蛋白質をコードする核酸分子を含む、請求項1の下等真核宿主細胞。
請求項8
(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子、及び(b)蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能が低下、破壊又は欠損させられ、ならびにシャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子が宿主細胞で発現させられる下等真核宿主細胞。
請求項9
シャペロン蛋白質をコードする内在性遺伝子が蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)をコードする、請求項8の下等真核宿主細胞。
請求項10
シャペロン蛋白質の哺乳動物ホモログがヒト蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)である、請求項8の下等真核宿主細胞。
請求項11
宿主細胞が更に組換え蛋白質をコードする核酸分子を含む、請求項8の下等真核宿主細胞。
請求項12
宿主細胞が更に内在性又は異種Ca2+ATPアーゼをコードする核酸分子を含む、請求項8の下等真核宿主細胞。
請求項13
宿主細胞が更にERp57蛋白質をコードする核酸分子及びカルレティキュリン蛋白質をコードする核酸分子を含む、請求項8の下等真核宿主細胞。
請求項14
(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能が破壊又は欠損させられ、ならびに内在性シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子が宿主細胞で発現させられる下等真核宿主細胞を準備する段階;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階;及び(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含む組換え蛋白質の生産方法。
請求項15
シャペロン蛋白質が蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)である、請求項14の方法。
請求項16
哺乳動物ホモログがヒトPDIである、請求項14の方法。
請求項17
蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能が低下、破壊又は欠損させられた、請求項14の方法。
請求項18
宿主細胞が更に内在性又は異種Ca2+ATPアーゼをコードする核酸分子を含む、請求項14の方法。
請求項19
宿主細胞が更にERp57蛋白質をコードする核酸分子及びカルレティキュリン蛋白質をコードする核酸分子を含む、請求項14の方法。
請求項20
(a)シャペロン蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能が破壊又は欠損させられ、ならびに内在性シャペロン蛋白質の少なくとも1種の哺乳動物ホモログをコードする核酸分子が宿主細胞で発現させられる下等真核宿主細胞を準備する段階;(b)組換え蛋白質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する段階;及び(c)組換え蛋白質を生産するのに適した条件下で宿主細胞を増殖させる段階を含むO−グリコシル化の低下した組換え蛋白質の生産方法。
請求項21
シャペロン蛋白質が蛋白質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)である、請求項20の方法。
請求項22
哺乳動物ホモログがヒトPDIである、請求項20の方法。
請求項23
蛋白質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)蛋白質をコードする少なくとも1個の内在性遺伝子の機能が低下、破壊又は欠損させられた、請求項20の方法。
請求項24
宿主細胞が更に内在性又は異種Ca2+ATPアーゼをコードする核酸分子を含む、請求項20の方法。
請求項25
宿主細胞が更にERp57蛋白質をコードする核酸分子及びカルレティキュリン蛋白質をコードする核酸分子を含む、請求項20の方法。
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